検索窓
今日:3 hit、昨日:17 hit、合計:58,300 hit

子を守るため鬼にもなろう ページ29

どれほど走れただろう。どれほど遠ざかれただろう。出現した検非違使は残らず付いてきてくれただろうか。

上がる息、弾む鼓動、限界を訴えて震える足。
なんとか躱しながらも徐々に切りつけられて血の滲む身体。

後ろに流れて行く木々の隙間からキラリと槍の突きが迫るのをぎりぎりで視認。
間一髪で一撃を受け止めた衝撃でたたらを踏み、木に背を打ちつけ足を止めてしまった。

完全に追いつかれた。

山姥切は乾いて血の味が滲む口内を舐め、検非違使を睨みつける。

迫る白刃を掻い潜りその胴体を斬り付けるが、いかんせん練度は同等、多勢に無勢で勝機が見えない。

もともと癒えていなかった疲労も重なり、本体を握る力が一瞬緩んだ。その隙を見逃してくれる検非違使ではない。

大太刀の力でギンッと下から打ち上げられ、衝撃に耐えきれず刀を手放してしまった。

本体が宙に舞い、太刀の一撃が迫る。

「ああクソッ」

思わず悪態を吐く。
避けきれない、ならばせめて、腕一本を犠牲にしてでもなんとか凌がなければ。

来るであろう痛みに備えて奥歯を噛みしめ腕を構えた時、ふいにじわりと胸の奥に温かいものが広がった。


「私の雛鳥に、何してんのよ!!!」


月明かりが刀身に反射して、その一閃は夜闇を切り裂いた。

血潮が飛ぶ。

完全なる認識外から脳天を貫き一太刀のもとに切り捨てられ倒れた仲間に検非違使が怯んで後退した。

バサリ

長義の前に舞い降りた黒い翼の背中が立ち塞がる。

ッなんで逃げてない!

長義は喉から出そうになった言葉をすんでのところで飲み込んだ。

射抜く視線で縫い止められる。

半身でチラリと振り向いた彼女の紅玉の瞳は爛々と輝き圧倒的強者の風格を湛え、下手なことを口にすれば、その刃の餌食になるのはこちらなのではないかとすら錯覚した。

「長義くん、私ね、怒っているの」

一節一節で区切るように淡々と。

おそらく打ち上げられたのを空中で捕まえたのだろう本体である山姥切を、真っ直ぐに検非違使へ構えると低く唸るように告げた。


「縄張りを荒らす不埒者共が。雛鳥を傷付けられた親鳥ほど、強く恐ろしいものは無いと知れ」

呼び起こされる魂の脈動→←地雷畑でタップダンス



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (158 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
348人がお気に入り
設定タグ:とうらぶ , 転生 , 山姥切長義
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

翡翠琥珀@カリナと咲(プロフ) - ァ"ァ"ァ"好きぃ... (2022年3月31日 15時) (レス) @page42 id: cceed3ce75 (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 返事がない只の屍のようだ。さん» ちょぎくんの布教が出来て嬉しいです!沼へようこそ。 (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - sesiroさん» ありがとうございます。成り鶴もよろしくお願いします (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - まるさん» ありがとうございます (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
返事がない只の屍のようだ。 - はじめまして!そして完結おめでとうございます!!大好きです!!!終わってしまい寂しいですがちょぎ君、思い出して貰えて良かったね゙ぇ〜!(T△T)ズビィ この小説を切っ掛けでちょぎ君にハマりました!ありがとうございます!!(謎)これからも頑張って下さい! (2021年3月5日 12時) (レス) id: 2157a47614 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/  
作成日時:2020年12月5日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。