【文スト】この世界で生きるのは不可能という結論が出ました 9

三百五十一話 ［強制解除］ ページ5

異能力にはリミッターが存在する。
それは人間が無意識にかけているもので、それを超えてしまえば破滅へと向かうと本能的に理解しているからリミッターをかけるのだ。
例えば泉鏡花の異能は携帯電話がリミッターとなっていて、無差別は命令を止める役割を務めている。
…少なくとも、Aはそう考えていた。



「《異能力の制限を解除》」



だから考えたのだ。
"もしも自分でリミッターを外したのであれば、それは異能力の全てを使うことができるのではないか"と。
もちろんそれは仮説であり、強制的に異能を100%引き出してしまえばどんなことになるかは分からない。



「なんて、ことを…！！」



福地が呻き声をあげる。
目の前がチカチカした。
頭が痛みを訴えた。
異能を使いすぎると起こる現象が今、一瞬で起こった。



「自分自身に異能をかけて、精神を操作しているのか…！？」



異能力《神々の国の首都》は精神操作だ。
鏡花の携帯からヒントを得た。
もし、その精神操作を携帯電話を媒介とし、自分自身にかけることができたら。
もしも異能をかけた相手だけでなく自分自身の異能も100%引き出すことができたら、









「勝率、だいぶ上がると思うのだけど」



「…は、ぁぁぁ！？」



ここに来る前、厳密には四日程前。
立原の部屋で作戦会議をしていた。
その中でAは奥の手としてその作戦を提案したのだ。



「自分に精神操作かけてリミッター外すって…どんだけリスクあると思ってんだよ！？」



「死ぬと決まったわけじゃない」



「聞いたことねぇよ！んなイカれた異能の使い方！！」



自分自身でリミッターを外す、聞こえはいいが、要するに自爆覚悟の戦法だ。
しかもやったことがないからぶっつけ本番になる可能性が極めて高い。



「仮にできたとして！！俺もお前も無事じゃ済まねぇぞ！！」



立原が別の作戦を提案しようとした瞬間、思い切り後ろに引き倒された。
いってぇ、と言葉を吐き捨てる前に、馬乗りになったAが立原の胸ぐらを掴み上げる。



「甘えるな。私たちが相手にしてるのはそれくらいやっても勝てない相手なんだよ」



「！」



「無事では済まない？もともと奴を相手にする時点で死ぬのが前提のようなものだ」



「…は、心中ってことか？」



「…は？」



「心中覚悟で、やるってのか？」



Aの紫の瞳が揺れる。
散々上司から聞かされた心中の二文字に思うところがあるのだろう



「…いいぜ」



「…は？」

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