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特大の罠を仕掛けた ページ25

煩い、耳の奥が変な音を立てる。
焦げ臭い、ガスを出し過ぎたようだ。
痛い、吹き飛ばされた衝撃が全身を襲う。



「…うっ…」



いつまでも地面と仲良くしている訳にはいかない。
ズキズキと痛む体を叱咤し、腕に力を込めて起き上がる。
煙となにかが焦げる臭いが漂う中、自分が生きていることを確認した。



「うまく、いった…」



Aはふらふらと立ち上がりながら、目の前に広がる光景に苦い顔をする。
跡形もなく吹き飛ばされた廃工場は瓦礫の山と化し、所々火が揺らいでいる。



「文字通り木っ端微塵じゃのう、儂も危うく吹き飛ばされるところだったぞ」



何処に隠れていた、夏目が時折煙のせいか咳き込みながら現れる。
彼は、Aがここに来る前に隠しておいたローファーを彼女の前に置いた。



「まさかここまで大規模な罠を仕掛けていたとはのう」



ポートマフィアを嵌める罠は、数ある廃工場の中であそこを選んだところから始まっていた。
Aが選んだ廃工場は、廃棄されたガスボンベやまだガスが通っているガス管が大量にあった。
本来、危険性から撤去される筈だが、担当者がいない為にそのままになっていたのだ。
そこに目をつけ、大規模な爆発を起こして一網打尽にしようと考えたのだ。



「お前が新品の香水を割った理由が漸く判った」



まず大切なのは、ガスの存在に気づかれないこと。
この為に、デパートで買った香水を割ったのだ。
津島の贈り物を探している時に偶然見つけた女物の香水で、
生まれて初めて気に入った香りだったが、仕方ない。
それを割ることでガスの匂いを誤魔化したのだ。



「壁に弾を当てるな、というのはガス爆発を起こさせない為か」



「まだ室内にいるうちに爆発させたら双方死にますから」



バルブを緩め、ガスが充満してから拳銃で大爆発を起こさせた。
辺り一体更地になった廃工場跡を見つめ、ふと呟く。



「死んだ、のかな…」



「いや、死んではおらんじゃろう」



何処か辛そうな目でその光景を見つめていたAに、夏目が淡々と返す。



「お前、爆発の寸前に異能を解除したな?」



「…」



夏目は猫の姿で確かに見ていた。
これからのことを考えれば生かしておくのは危険な相手に、情けをかける少女の姿を。



「さようなら…『解除』」



まるで、地獄に糸を垂らすような、そんな光景だった。

黒と白、灰色→←獣が噛みつく



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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