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彼らの嘘と少女の答え ページ18

彼らは初めから殺すつもりで襲撃している訳ではない。
夏目は目を細め、ほう、と声を漏らす。



「その根拠はなんじゃ?」



「私程度に、あんな手練れ二人仕向ける必要は全くないから」



確かに異能は強いかもしれない。
条件さえ揃えば自分の異能は驚異的な強さを発揮する。
しかし、



「本当に私を殺したいのなら、スナイパーが遠くから頭を撃ちぬけば直ぐに終わる。
態々、ポートマフィア本部が襲撃されている時に重要な異能者を小娘一人の
暗殺に向かわせるよりも、ずっと効率がいいから」



自分の頭を撃つような動作をしながら、Aは云う。
小娘一人、効率よく手間も取らずに殺すにはこちらの方がよほど良いだろう。



「でも彼らの首領はそうしなかった。
気づかなかった?いやそんなことは絶対にあり得ない。
では…この襲撃はなにを意味するのか」



津島が、いや太宰がなにを考えているのかは判らない。
だが一つだけ判ることがある。
人差し指を立て、唇に寄せる。
昔から、誰かに秘密の話をする時にしてしまう、癖のようなものだ。



「この襲撃の真の目的は、暗殺では無く私の足止め、つまり妨害」



この命令を出した者はAと云う人間をよく知っている。
Aが他人を巻き込みたくないこと、
仲間の元に敵を連れていくことを避けること、
その為に一人で行動するであろうこと。
黒にも白にもなれない灰色の正義を持った少女のことを、恐ろしいほどよく知っている。



「…でも、何故足止めしたいのかは判らない」



何故足止めをしたい?
ポートマフィア本部に行かせたくない理由でもあるのか?
なにか、行ったら困る理由でもあるのか。
それだけがどうしても判らなかった。



「…成る程、先程の攻撃はそれを確かめる為のものじゃったか」



「あの場面で本気で攻撃してこなかった、つまり、殺してはいけないと命令されている。
…まあ、本気で斬られたらそれはそれで危なかったですが」



紅葉の攻撃で確信した。
本気で殺したいなら峰打ちなんてしない。
彼らは自分を生かしておきたい、そして足止めをしたい。



「でも、私はその足止めに立ち止まる気は全く無い。
だが強行突破は難しい…なら、」



出口が一つのこの薄暗い倉庫。
僅かなガス臭さと錆と潮の匂いが漂う部屋が舞台。



「私のやり方で、消えてもらうしかない」



それが、私の答え。

盤上で踊りましょう→←夏目漱石という男



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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