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三つの掟 ページ11

唐紅の美しい着物の女と、この前遭遇した重力操作の男。
この状況での襲撃者がどの組織なんて初めから判ることだ。



「ポートマフィアが私に何の用?」



銃口を一切揺らさず、Aのその二人を冷たい目で見つめた。
二人は自分が戦って勝てる相手では無いと本能的に理解できる。



「わっちらが来た理由は、マフィアの掟を守るためじゃ」



嫋やかに微笑むその女。
そして、白魚のような指を3本掲げた。



「ポートマフィアには三つの掟がある。
一つ、首領の命令は絶対であること。
一つ、組織を裏切らないこと。
一つ、受けた攻撃は必ず倍にして返すこと」



紅を塗った唇が艶っぽく、同時に彼女の刃のような気配を隠しているようにも思えた。



「優先順位はこの通り。
さて、手前は何故俺たちがここに来たか、そう聞きてぇんだろ?」



帽子の男が青く冷たい瞳で笑う。



「手前を殺せと、首領直々の命令だ」



「!!」



動揺で、銃口が揺れた。
殺す?私を?首領が?あの人が?



「流石に驚いた顔だな、まあ無理もねぇ。
だがな、手前は今うちの本部を襲ってる侵入者と同じ組織。
それだけで報復の理由には十分なるんだよ」



「悪いのう、恨むならお主の同僚を恨め」



死を望まれている?
あの人が、私に死んで欲しいと思っているの?



「…う、そだ」



Aの口から漸く出たのは、否定の言葉だった。
動揺に揺れる紫色の瞳が、カタカタと震える赤い唇が、更に真っ白になる顔色が、
散りかけの花の最後のようでなんとも哀れみを誘う。



「案ずるな、苦しませるようなことはしないぞ。
…お主が抵抗さえしなければのう」



本気だ、本気なんだ。
読み違えた、わざわざこんなところに来たのが間違いだった。



「諦めな、袋のネズミだ。
俺たちの追跡を振り切れなかった手前が、逃げられると思うか?」



そうだ、振り切れたらこんなことにはならなかったのに。
"人を死なせたく無い"からと、ここにきたのが間違いだった。



『大丈夫』



そんな声が何処からか聞こえた気がした。
懐かしいような、落ち着くような声。



『そうだ、信じろ、自分自身を』



探偵社員としての自分を。



「ねえ、こんな言葉を知ってる?」



逃げない、だって私は探偵社員だから。



「窮鼠猫を噛む」



逃げたりなんかするものか。

探偵社員は諦めない→←追跡者



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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