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日の当たる場所、日の沈む場所 ページ9

芥川がポートマフィア本部に単身乗り込んだらしい。
それを与謝野から聞いたAは、いよいよ彼の獣らしさに笑えなくなる。
それが例え、妹が処刑されるとしてももう少し冷静になるべきだ。



「彼奴、正気じゃない」



「相当トサカに来てたみたいだからねぇ。
さっきのアンタに負けないくらい怒り狂ってたよ」



「…」



「なにがあったのか知らないけど、アンタが無事で良かったよ。
芥川の方は国木田達が援護に向かってる、心配しなさんな」



「…私も、行きます。
現場には行けませんが、状況を見てなにか助言が出来るかもしれません」



与謝野は答えなかった。
影が落ちそうなほど長い睫毛の下、赤と紫が混ざったような色の瞳に浮かぶのは迷い。



「社長がね、アンタを見て云ったんだよ。
『一線を越えさせるな』って、初めてさ、あんな社長見るのは」



一線を越えさせるな?
なんの話?社長はなにを見てそんなことを云ったのか理解できない。



「あと、乱歩さんも。
『捜し物が見つかった時、本当に苦しむのは君かもしれない』って」



「!」



「妾にはその意味まで判らない、でもね」



与謝野はゆっくりと目の前の椅子に腰掛ける。
黒い手袋をはめた手で、自分よりも細いAの手をそっと握った。



「アンタは妾達の大切な仲間だ。
なにあったらその時は遠慮なく云いな、助けてやるから」



ニッと笑った与謝野に、Aは目を見開く。
そんなことを云ってくれる人、今まで居なかった。
そうだ、この人たちが自分の、



『でも、あの人も同じように温かかった』



Aの触れられていない方の手が、握り締められる。
日の当たるこの場所と、闇に沈んだあの人の側、その差は果たしてあるのだろうか?



「妾らは万が一に備えてここに待機してる。
アンタはまだ薬が抜け切ってないから、暫く休んでから来な。
くれぐれも、無理をするんじゃあないよ」



与謝野は国木田達が待機している場所を紙に書いて渡したのち、医務室から出て行った。
誰もいない探偵社は、酷く静かに感じる。
暫く、時計を睨み付けていた。



「…」



手を何度か動かし、意識を確認する。



「行こう」



入院服を脱ぎ、黒い制服に袖を通す。
拳銃の弾を確認し、スカァトの下のホルスターに隠した。



「大丈夫、私は大丈夫」



探偵社を出て行く直前、窓から三毛猫がこちらを見つめていた。

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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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