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他愛もない会話の中で ページ41

「あっはっはっは!それで昨日は子供達の玩具になっていたのかい!?」



「髪に花を刺されてしめ縄のようにされた辺りから自分を見失ってました」



その言葉に、津島は耐えきれないと云わんばかりに机に突っ伏した。
大笑いしている彼を冷ややかな目で見つめながら、珈琲にミルクを入れる。



「ひぃ…笑った笑った。それで?今日の予定は?」



「親代わりとして授業参観に参加します」



「んぐぅ」



再び津島が噴き出した。
肩が小刻みに震えている。



「…ふふ、本当に君といると飽きないよ」



「!」



その言葉に、Aの紫の瞳が揺れた。
あちらの世界では誰からも見放されたというのに、彼は自分と笑っていてくれる。



「…変な人」



ミルクが入った珈琲をゴクリとのんだ。
仄かな甘みが心地よい。



「君、今日は疲れてるでしょ」



突然そんなことを云われて、Aは驚いた顔をする。
津島は悪巧みする子供のように笑った。



「普段はなにも入れない、角砂糖が一つ入る時は頭を回したい時、
今回みたいにミルクが入る時は疲れている時、
角砂糖とミルクが入るのは肉体的にも精神的にもどうしようもない時」



咄嗟に自分の手元の珈琲を見た。
自分でも考えたことすら無い、だが確かにその通りだった。



「津島さん…探偵に向いてるんじゃ無いですか?」



何気なく云った言葉に、津島は一瞬表情を消した。
しかしそれにAが気付くことは無かった。



「…そんなことないさ、私はただ…」



その言葉は終わりまで紡がれることは無く、カフェの音楽にかき消される。



「…うん、私はやはり楽に死ねる方法を探す方が性に合ってるよ」



「そのジサツ方を探す癖、どうにかなりません?
他にもあるでしょう、ほら…趣味みたいな…スポーツとか」



「私疲れるの嫌い」



「学問は?」



「面倒だなぁ嫌」



「では料理は?」



「そうだ!聞いてくれたまえ!
この前凄まじく固い豆府を作ったんだが、固すぎて包丁が折れた!」



「それはもう食べ物では無いのでは?」



「え、じゃあ寝ずに走り回れる鍋は」



「それ法律に引っかかりませんか?」



口ではそう云いながらも、Aの表情は柔らかだった。
不思議と、ここに来ると心が安らぐ。
父が生きていた頃のように、安心する。
そう、少女は思っていたのだ。



あの時までは。

繋いだ手はいつまでも→←子供は風の子



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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