＊ ページ22
神隠しはこれが初めてじゃない。
初めて遭遇したのは十一年前、七つの時だった。
「生きて帰りたいのなら、私について来れば良い。
嫌ならそのまま何処か行って構わない」
「…もし、断ったら？」
鐵腸は道に生えている季節外れの彼岸花をつついて問う。
百戦錬磨の彼らは判るのだろう、ここが普通の空間ではないと。
「魅入られて、連れて行かれて、それから先は私でも知らない」
ゾッとするような内容をAは当たり前のように口にした。
「恐らくこの神隠しを行った神は、異能者が酷く気に入っているようだ。
しかも見目が綺麗だったり強い者…だから貴方達もここに連れて来られた」
サァ、と冷たい風が吹いた。
Aの黒髪が舞い、薄暗い空間の中、赤い唇が妙に禍々しく見える。
玉座から嘲る女王のように、彼女は笑った。
「強い貴方達でも、神に勝てるのかなぁ？」
猟犬には随分と怖がらせてもらった。
だから、少しくらい脅かしても良いだろう。
「私、気になるの」
笑う時は口角を上げて、指先は頬に添えて。
そして悪意と狂気を滲ませてやれば十分怖がらせる事が出来た。
「…いや、これは予想外だったけども」
数分後、Aは怖がらせたことを後悔した。
まず、立原が気絶しかけた。
直後、鐵腸がこの空間で異能を発動させようとし、
流石にまずいと思ってAは止めたが、
��子がその辺のものを破壊し始め、福地が興味深そうに何かの気配がする方に歩いて行った。
伊達に百戦錬磨の猟犬では無かった。
「まさか破壊行動に出るとは…」
「貴女の脅しのせいですよ」
条野が低い声で恨みを吐く。
Aは気絶した立原を見下ろし、ため息をついた。
「判った、判ったから。帰れるようにするから取り敢えず暴れるな！！」
神域に、Aの怒声が響き渡った。
「私から一定距離離れないこと、声をかけられても振り向かないこと、大声を出さないこと」
「最後のはさっきお主がやっておったじゃろう」
「うむ、凄まじい怒声だったな」
��子と福地の話し声に、Aのこめかみに青筋が浮かんだ。
それを横目で見ていた立原が戦慄する。
「こっわ…」
「あ？」
立原は無言で鐵腸の後ろに隠れるのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1091人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シア - 続き楽しみにしてます！！ (1月4日 15時) (
レス) @page50 id: 5afea0a2a0 (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - もこすけさんが戻って来てくれたら嬉しいです‼‼‼‼ (8月2日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - この作品はとても面白くて大好きです‼‼‼‼特に猟犬との絡みが見ててとても面白くて楽しいです‼‼‼‼文章力がとても高いので作品に引き込まれます！最近はこの作品をモチベーションにして頑張っています‼‼ (8月2日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
絵の具セット - 番外編もめちゃくちゃ面白いしキュンキュンします！！これからもがんばってください！！！更新再開待ってます！！ (2023年4月10日 20時) (レス) id: b2c10b1855 (このIDを非表示/違反報告)
アスパラ - とっても面白かったです！続きまってます！ (2023年4月8日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年10月13日 19時
