＊ ページ16
それから色々なことがあった。
Aの予告通り、紅葉が連れ戻しに来て、組合がヨコハマに来て、
あれっきりAは全く鏡花の前に現れなくて。
「優しい、人だった」
ポツリポツリと話し出した鏡花に、敦はなにも云えなかった。
他の仲間も、藤色の着物のマフィアは組合戦では全く目撃していない。
考えられることは、鏡花への接触が露見してなんらかの処罰を受けたとしか。
「あの、人は…マフィアだったけど、優しい人だった。
私が夜叉を使いたくない時…あの人が異能を使った。
それで、云ったの」
ー私が命令を出して殺させた、だから貴女はなにも悪くないー
その異能の希少価値ゆえ、彼女は任務に行くことが多かった。
帰ってくると大抵着物は赤く染まっていて、見ていられなかった。
「会って、ちゃんと話したい…でも…」
もう居ないかもしれない。
そう思うとまた涙が溢れて止まらなくなった。
「鏡花ちゃん」
ふと、太宰が鏡花の前にしゃがむ。
「彼女ならきっと大丈夫さ。
少なくとも生きてる、ここだけの話だがね」
太宰は人差し指を唇に当て、クスクスと笑う。
「『鏡花をよろしく頼む』って探偵社に頼んできたの、他でもないその子だからね」
「え…！」
「組合戦終わった後くらいかな、ご丁寧に『泣かせたら八つ裂きにしてやる』ってね」
太宰はボソッと「多分あれ本気でやるよ」と呟き、敦は青い顔をした。
「あれだけ怖い先輩なら、心配しなくても無事さ」
鏡花は、その言葉にコクンと頷いた。
小さなその背中を、夜叉白雪は壁に縫い付けられた状態でじっと見つめていた。
『お前は鏡花がこちら側に来てしまった理由になったようだけど…』
いつぞや、彼女は任務の疲れから眠る鏡花を膝に乗せ、夜叉白雪を見つめていた。
『同時に、この子を守れるのはお前しか居ない』
判っていたのだろう、彼女は。
妹分がマフィアからそう遠くない未来、いなくなることが。
『夜叉白雪、何があってもこの子を守れ。
側にいて、最後まで見守り、その役目を果たしなさい』
小さな主人を、かつての主人に託された命を守れ。
『私はあちら側に行けばもう助けてはやれない…あとは頼んだ』
夜叉白雪の目にうつるのは、小さな主人。
守れ、そう云ったあの人は今どこにいるのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1091人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シア - 続き楽しみにしてます！！ (1月4日 15時) (
レス) @page50 id: 5afea0a2a0 (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - もこすけさんが戻って来てくれたら嬉しいです‼‼‼‼ (8月2日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - この作品はとても面白くて大好きです‼‼‼‼特に猟犬との絡みが見ててとても面白くて楽しいです‼‼‼‼文章力がとても高いので作品に引き込まれます！最近はこの作品をモチベーションにして頑張っています‼‼ (8月2日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
絵の具セット - 番外編もめちゃくちゃ面白いしキュンキュンします！！これからもがんばってください！！！更新再開待ってます！！ (2023年4月10日 20時) (レス) id: b2c10b1855 (このIDを非表示/違反報告)
アスパラ - とっても面白かったです！続きまってます！ (2023年4月8日 22時) (レス) id: 31d4d35068 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年10月13日 19時
