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Aはべったりと染まった口元をぐぃっと拭う。
血を分けて貰った恩もあるが、強引に飲まされたせいか若干恨みがこもった目をしている。
やはり彼女は普通の女より気が強いらしい。







「…これ、使ってください」








そういって渡してきたのは絆創膏だった。
首の傷口を手当てしろという意味なのだろう。







「…手前が手当てしてくんねぇの?」







「…うちのとっても腕のいいお医者様の、麻酔なし手術をご所望なら構いませんが?」








「貰っとくわ」







ちょっと調子に乗ればこれである。
目が本気だった、マフィアでもなかなか見ない目である。
中也は素直に絆創膏を受け取り、傷口に貼る。
Aはブツブツと何かを呟いている。







「こんなこと、あの人にバレたらそれこそ…」







「私がなんだい?」








「ひっ…!」







Aが化け物にでも会ったような声を上げた。
振り向いた先には、月を背ににっこりと笑う太宰が居た。
中也の顔が盛大に歪む。







「Aちゃん、私の見間違いじゃなければ…中也の血を飲んでなかったかな?」







Aが目をそらす、ちょっと泣きそうになった。
この人、こんな子供(と云っても十八歳だが)に大人気ないことして恥ずかしくないのか。







「…人と話す時は目を見て話すって教わらなかったかな?」







太宰の声が低くなる。
Aはポケットの中の携帯を静かに動かした。







「ハッ、なに焦ってんだよ手前は」







「…君も、この子を揶揄うのはやめてくれないかい?」







「あ?こいつは手前のモンじゃあねぇだろ」







逃げたい、非常に逃げたい。
自分の肩に手を置く二人の男から。
あぁ、あれもこれも全部異能者のせいだ。







『この人達はなんなんだ、怖い。
目の奥が笑ってないのも尚更、どうしよう、ちょっと泣きそう』







これも全部あの異能者のせいだ。
絶対に許さん、そう思った瞬間だった。
道の奥に、忘れることのない憎たらしい顔を見つけた。







「い、た」








その瞬間だった。
地面を蹴り上げるように走り出した。
そして、なにかから逃げるようにして表通りに出てきた男を、







「お前のせいだ」








私怨がこもりまくった拳、ではなく、今回は拳より威力の強い膝を。








「お前の、せいだ!!」









「げぅっ!!」








思い切り異能者の腹に叩き込んだ。
何処かでゴングが鳴り響いた気がした。

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もこすけ(プロフ) - あっきーさん» 嬉しいコメントありがとうございます。人狼ゲーム、書いていても楽しかったです。考えるのはなかなか大変でしたが、喜んでいただけて良かったです。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月26日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
あっきー - 人狼シリーズ大好きです!本当に天才だと思います!!これからも楽しみにしています! (2019年11月25日 17時) (レス) id: d54700ef05 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございました。本当ですね、たった今気づきました。ありがとうございます。これからもこの作品を、よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
そー氏。(プロフ) - 返答ありがとうございました。いつもこの作品応援しています。ちなみにタイトルが「この十六」になってますよ「その十六」じゃありませんか? (2019年11月3日 9時) (レス) id: 15750ac93c (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございます。小泉は、普段は髪で隠れて見えませんが、首筋にホクロがあります。基本、見えるところにはありません。ちなみに母親の雪も同じです。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年8月17日 20時

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