検索窓
今日:1 hit、昨日:13 hit、合計:208,521 hit

ページ6

吸血鬼事件の死亡者は十三名、だがそれは判明しているだけで、まだいるだろうというのが乱歩の見解だ。






「作戦はこう、ヨコハマの何処かに隠れた異能者を見つけ出して無効化すること。
国木田、敦と鏡花のチームと太宰とAのチーム、その他二つに分かれての捜索だ」







乱歩の作戦で、ヨコハマ内に隠れた異能者を探すことになった。
相当ご立腹なAは、なにかあった時の為に太宰と行動する事になった。







「Aちゃん、お腹空いてない?」







「空いてませんあまり近づかないで下さいお願いします後生です」






Aは太宰の顔をまともに見れずにそそくさと逃げるように歩く。
太宰にあんな事、そう、あんな事をされたのだ。







『やめろやめろ思い出すな忘れてしまえばいい』







そもそも、最近まで高校生だった小娘と元ポートマフィアの幹部とでは経験が違うのだ。
Aからしたら、アレは、







『アレは、私が知らない世界だ』







恥ずかしくなって近くの壁をガァンと殴りつけた。
当然手の方が痛くなる訳で、Aは手を押さえて蹲って呻いた。







『彼の人の事は、矢張りよく判らない』








他の探偵社員の事は、大抵判る。
でも太宰だけは、覗けば覗くほど底が見えない海のようで、
Aの目には全てが見えなかった。
だからこそ、尊敬しているし怖くも思っている。







「…なに考えてんだ莫迦みたいだ」







今はそんな事考える時では無い。
パチンと頬を叩き、後ろを向く。







「あ」







そして気づいた、速く歩きすぎて太宰を置いてきてしまったのだと。
暗い夜道に一人、Aは立ち尽くしていた。







「やってしまった…」








ガシガシと頭をかく。
だが今は好都合かもしれない。
今はお腹も空いてないし、これなら夜明けまで動けるだろう。







「よし」








その時、厚い雲に覆われていた月が顔を出した。
Aがふと月を見上げた。








「あ…」








Aの目にうつる、重力を無視したように宙に浮く影。
黒い外套を揺らす彼は、Aを見下ろして口角を上げた。







「こんな時間に、別嬪が一人で歩いてんじゃねぇよ」







「…こんな時間に出歩いているのは貴方もでしょう」







Aは、彼を見上げて云った。








「中也さん」








中也は、ニヤリと笑う。
一瞬だけ、酷く甘い香りを感じ、ゴクリと喉が鳴った。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (274 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
779人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

もこすけ(プロフ) - あっきーさん» 嬉しいコメントありがとうございます。人狼ゲーム、書いていても楽しかったです。考えるのはなかなか大変でしたが、喜んでいただけて良かったです。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月26日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
あっきー - 人狼シリーズ大好きです!本当に天才だと思います!!これからも楽しみにしています! (2019年11月25日 17時) (レス) id: d54700ef05 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございました。本当ですね、たった今気づきました。ありがとうございます。これからもこの作品を、よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
そー氏。(プロフ) - 返答ありがとうございました。いつもこの作品応援しています。ちなみにタイトルが「この十六」になってますよ「その十六」じゃありませんか? (2019年11月3日 9時) (レス) id: 15750ac93c (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございます。小泉は、普段は髪で隠れて見えませんが、首筋にホクロがあります。基本、見えるところにはありません。ちなみに母親の雪も同じです。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もこすけ | 作成日時:2019年8月17日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。