【文スト】この世界と番外編 その十六

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「よくやったナオミ！！」






開口一番、死亡部屋から出てきたAはそう叫んだ。
Aにしては珍しく感情を表に出し、ナオミを褒めていた。







「Aさんやりましたわ！」








「ああ長かった、ゲームを繰り返すこと３５回…！
人狼になれば太宰さんに見抜かれ、占い師になれば人狼の太宰さんに襲撃され、
その他役職についても悉く負かされてきたが漸く…！！」







そう、実は探偵社でも何回か人狼ゲームをやっているのだが、
太宰に勝てた試しは一度もない。
そんなこと、プライドがエベレスト並みに高く気が手負いの狼のように強いAが納得する訳無かった。







「生き生きしてる…」







「性格が悪そうな顔をしているな」







無意識に愉悦に歪んだ顔をしているAに敦は青い顔をし、芥川は死んだ目をした。
ちなみにこの二人、役職が恋人で互いにえづいた。







「それにしても、アンタらよくこのメンツで勝てたね」







与謝野は人狼のメンバーを見て「やばいの揃いだ」と呟く。







「ふふ…それでも勝ったのは事実ですから」






市民陣営。
A、暗殺者。
ナオミ、聖女。
鏡花、占い師。
立原、霊能者。
敦、芥川、恋人。
賢治、騎士。
与謝野、国木田、紅葉、市民。

人狼陣営。
太宰、魔女。
中也、乱歩、谷崎、人狼。
梶井、狂人。

樋口、妖狐。







「本当に凄いな…太宰と乱歩さん相手であそこまでやるとは」







国木田の賞賛はもっともだ。
役職は雪が決めたが、まるで勝つ可能性が薄い配置だった。
しかしAは見事やり遂げた。
だからこそ嬉しくて仕方ない。







「ねぇ太宰さん、ねぇねぇ貴方ですよ。
私を呪って勝った気でいた貴方です、そう貴方。
ねぇねぇ今どんな気持ち、ねぇ太宰さんたら」







「見ろ皆、あれがAの本性だ」







乱歩は負けたことが悔しいようだが、ノリノリで太宰に絡みに行っているAに引いていた。
ちなみに中也は「知ってた」と呟いている。
太宰は若干引きつった表情を浮かべる。







「君…いい性格してるねぇ」







「悔しいですか？もっと見せてください貴方のその顔。
ほら勝ちましたよ私が、私達が、貴方に」







「…」








「そう、その顔が見たかった。ふふっ…写真撮ってもいいですか？」







その、生き生きとした様子に福沢と森は思った。







「「雪さんにそっくりだ」」








こうして、波乱の人狼ゲームは幕を下ろすのだった。

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