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傷は消えても痕は消えず [緋華様リクエスト] ページ11

目の前で、あの人が名を呼ぶ。






「A」






ごめんなさい、お願いやめて。







『お父さん』







時は、数時間前に遡る。







「…精神崩壊の異能者?」







「あぁ、その捕縛だ」







そんな依頼を受けた時、Aは脳裏にQを思い浮かべた。
だがあの子はポートマフィアの地下牢にいるし、精神崩壊では無い。








「その異能者に襲われた者は悉く精神を壊している。
そこで、指名されたのが異能無効化の太宰と、
異能操作のA、というわけだ」







指名されたAはサボろうとする…というか既にサボって机で寝ている太宰の首を掴んで、






「はい」







「首入ってる首ねぇ首」







「判りました」








「首ィ、Aサン首ィ!!」







今思えば、あの時断れば良かったのかもしれない。
太宰と二人、異能者が出現すると噂の倉庫街で張り込みをする。







『精神崩壊って、Qのような幻を見せたりするのかな』







欠伸を噛み殺しながら見張る。








『そう、例えば…トラウマとか?』








その時、薄暗い倉庫の中に動きがあった。
ひとりの男が現れたのだ。
その顔は、手配書の通りであった。







「動くな」








「はぁい、探偵社です」








Aが拳銃を向け、太宰が探偵証を掲げる。
動けば撃つつもりだった。






「ふぅん、一人は無効化…でも…」







男の唇がニヤリと笑う。








「君は"効く"だろう」








その瞬間、男の姿がぐにゃりと歪んだ。
まるで陽炎のように、そして次の瞬間現れた姿に、血の気が引く。







「あら、なぁにその目は?」








そこには、忘れるはずもない義理の母の姿があった。
冷酷で人を人とも思わない、あの瞳がこちらを向いている。







『これは、幻覚か』








期待を超えられなければ頬を叩き、真冬の蔵に閉じ込めたあの女がいる。
しかしこれは幻、そう思えば大丈夫では無いが耐えられた。
そして、再び姿が変わる。







「小泉さんって、私たちの事莫迦にしてるよね」








高校時代、陰口を云っていた少女の姿だった。
何処か莫迦にした目で、嘲るように口元は歪んでいる。







『大丈夫、これは幻覚、全部幻なんだから』








でも次の瞬間姿が変わった時、Aの手から拳銃が落ちた。
そこには、見慣れたあの人がいた。







「あ、ぁあ…」








厳格で、それでも優しかった父。
それが今、目の前にあった。

*→←*



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もこすけ(プロフ) - あっきーさん» 嬉しいコメントありがとうございます。人狼ゲーム、書いていても楽しかったです。考えるのはなかなか大変でしたが、喜んでいただけて良かったです。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月26日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
あっきー - 人狼シリーズ大好きです!本当に天才だと思います!!これからも楽しみにしています! (2019年11月25日 17時) (レス) id: d54700ef05 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございました。本当ですね、たった今気づきました。ありがとうございます。これからもこの作品を、よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
そー氏。(プロフ) - 返答ありがとうございました。いつもこの作品応援しています。ちなみにタイトルが「この十六」になってますよ「その十六」じゃありませんか? (2019年11月3日 9時) (レス) id: 15750ac93c (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございます。小泉は、普段は髪で隠れて見えませんが、首筋にホクロがあります。基本、見えるところにはありません。ちなみに母親の雪も同じです。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年8月17日 20時

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