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前を見ない同僚にぶつかられた条野が盛大にAに突っ込み、唇と唇が衝突事故を起こした。
もしぶつかってきたのが一般人ならこんなことにはならなかった。
だが、相手が猟犬最強の男だったのが良くなかった。







「条野、すまない」








謝って済むなら軍警要らねぇよ。
そう思ったのはAだろうか、条野だろうか。
少なくとも、「大丈夫ですか!?」と云いながらも頬を染めているナオミでは無い。
初めての女友達は意外にもドライな女である。








「…」







「…」







周囲の騒めきが酷く遠く感じる。
柔らかい唇の感覚は酷く官能的だった。
条野はハッとして、Aから唇を離す。








「…あの、なんと謝れば良いか…」








「思い切り接吻したな」







「誰のせいだと!!」








条野はまるで他人事のような鐵腸に殺意すら抱いた。
それにしても、先程からAの呼吸音が聞こえない。







「Aさん?Aさ…」








ナオミがAに声をかけ、唖然とした。








「…ッ、」








彼女は白い顔を真っ赤に染め、そしてプルプル震えていた。
紫色の瞳には涙すら浮かび、唇を押さえていた。
通行人は数名、その姿に目を奪われていた。







「あの…」







条野がなにかを云おうとした瞬間、Aが手を振り上げた。








パァン!!









肌を打つ高い音が響き、続いて条野は頬に熱を感じた。
叩かれたのだと理解した時には、Aは口を押さえて逃げるように立ち去った。
ナオミは慌てて友人の後を追う。
残されたのは「フラれた…」「ビンタされてフラれた…」「フラれちまった悲しみに…」という群衆の五月蝿い声だけだった。
あと、事の発端を作った同僚。







「大丈夫か条野」








「元はと云えば貴方のせいです」








「すまん」








だが、事故とはいえAの唇を奪ってしまったのは事実。
身体強化のお陰で大して痛くもない頬に触れながら、
条野は端正な顔を歪めてため息をついた。







「あの反応は傷つきますね…流石に…」








「ふむ…しかし、もし初めてを奪われたのならあの反応は納得がいくな」








「…はい?」








条野は、油が切れたブリキのようにギギッと鐵腸の方を向いた。
彼は相変わらず平坦な声で告げる。








「ファーストキスとやらだったのではないか?」









条野は、嫌な汗が噴き出るのを感じた。

*→←唇と唇の衝突事故 [睦月様リクエスト]



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もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» 恥ずかしさが上回り、凶暴化する小泉なのでした。ご質問ありがとうございました。 (2019年12月22日 19時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - なるほど可愛らしいところもあるけどそれ故に凶暴なんですね!返答ありがとうございました。 (2019年12月22日 18時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» コメントありがとうございます。はい、ききます。ですが本人も理解しているので近づかれた瞬間相手は宙を舞うでしょう。あと場合によっては殴られるので誰も小泉にやろうとしません。 (2019年12月22日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - コメント失礼します!ものすごく気になったことなので質問します。小泉ちゃんって脇腹ききますか?! (2019年12月22日 13時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 姫歌さん» ありがとうございます。私もとても楽しかったです。またコラボしましょう。ありがとうございました! (2019年8月17日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年6月16日 20時

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