【文スト】この世界と番外編 その十五

＊ ページ17

「え、ちょ、乱歩さん！？」







「このままじゃ人狼サイドに負ける。
だから今日は何の役職もない僕に投票しろ。
それで、明日明後日に必ず人狼を見つけ出して吊るせ」







乱歩の提案に、敦は瞠目する。
当然だろう、何故なら"乱歩は人狼ではない"のだから。







「乱歩さん、私は昨日、貴方を占いました。
結果はシロ、市民サイドですよね…なのに何故」







「簡単なことだ。僕を除けば"今ここにいる者は皆役職持ち"。
下手な投票で市民サイドに有利な役職が死んだら終わる」







乱歩の言葉に一瞬ドキリとする。
まさか、全て知っているのか？







「だから今日の投票は僕だ。そうすれば明日、人狼はあぶりだせる。
次の日も続けて人狼を見つけろ、それだけだ」






「じゃあ、いいんだね乱歩さん」








「いーよー。投票してよ」









与謝野は頷き、春野の開始の言葉で投票が行われた。
結果は乱歩の処刑、彼は部屋から出る際に一瞬こちらをみた。







「一回、数を合わせて考えてみなよ」








そう残し、彼は部屋から消えた。
Aは敦に指示を出し、夜のターンを迎えた。
そして、







「本日の犠牲者は、賢治君です」








霊能者である賢治が犠牲となった。
そうなると、人狼はもう判明した。






「与謝野先生、判ってますね」







「まさか乱歩さんがあそこでかましてくるとは思わなかったよ」








本物は賢治、偽物は与謝野だった。
昨日の時点で乱歩以外なら、人狼はもう少しうまく立ち回れただろう。
だがここまで来たらもう、総力戦だ。







「ちなみにA、昨日のアンタの占いはどうだったんだい？」








「…鏡花、シロ」








「…成る程ね」








与謝野は気づいたようだ。
だが、敦や鏡花は気づいていない。
"残りの人狼"は、よく判らない。







「慥かに、見事に化かされたね」








そして、与謝野の追放が決定した。







『人狼が確定した』








敦はAが人狼でないと知っている。
そして、昨晩の占いで鏡花でないことも。







『貴方が最後の人狼か』








Aの目は、太宰をとらえていた。
ずっと怪しんでいた、やはりそうだった。







『貴方の、負けだ』








敦の占い先は太宰にしてある。
そして今晩に決着がつく。
そう、思っていたのに。







「犠牲者は…居ませんでした」







「…は？」








太宰は、ニッコリと微笑んでいた。

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