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二百八十四話 [所詮その程度] ページ36

元の世界では、自分は他の人とは違うということに早々に気づいていた。
一度見たらなんでも記憶できる、ある程度のことは熟せる。



『でも、努力しなければそれ以上の結果は望めなかった』



勉強も運動も、努力をした。
勉強は、解き方は覚えていても難しい問題は学習を続けないと解くことが出来ない。
運動は、やり方を覚えてもそれを体が覚えるかは別の話。
天才だと云われた、神童だと云われた。



『誰も、私の努力を知らないで』



なんの努力もせずに満点が取れる訳ない。
怠けていて身体能力が上がる訳ない。
習い事だって、血を吐くような努力をした。



『そしてこの世界に来て、漸く気づいた』



私より上は幾らでも居る。
私は彼らの居る、"天才"の領域には一生届かないのだということを。



「私も、所詮凡人だ。
どれだけ努力したって"あちら側"には届かない、行けない」



悔しかった、情けなかった。
母は届いたのに、私は届かない。



「でも…私はそれでもいい」



だけど、それは諦める理由にはならない。
届かないのなら足掻け、無理だと判っていても。



「天才だろうが凡人だろうが関係ない」



天才だと持て囃された、凡人の少女は誓った。
本当の天才であった母に、そして自分に託してくれた彼に。



「勝つのは"私達"だ!!」



天才だろうが凡人だろうが関係ない。
勝った方が全てを手に入れるのだから。



ーそう、貴女はそれでいいのー



何処かで、母の声が聞こえた気がした。
優しく、行先を見届けるような、そんな声。



「貴方の思いはよく判る…焦燥、自己嫌悪、苦悩。
判る、判るよ、痛いほどよく判る」



その瞬間、シグマの体が弾かれる。
突如シグマを突き飛ばし、Aは勢いよく後ろに降り立った。



「でも…だからって諦める理由にはならないんだよ」



Aの手には、いつのまにかシグマの懐から抜き取られた発信器が。
緊急用のそれは、押せば現在地がカジノ中に知れ渡ることになる。



「ルーシー!」



「遅すぎるわよ!!」



瞬間、何もない空間から赤毛の少女が現れた。



「A!手を!!」



少女の手を、Aが掴む。
異能が発動される音がした。



「ッ、待て!!」



カチッと音を立て、発信器が押される。
カジノ中に警報が鳴り響く。



「…ごめんなさい」



私も守りたいものがあるから、同じ凡人を蹴落とす。
それが、運命というものだから。

二百八十五話 [赤毛の少女とその名前]→←二百八十三話 [天才と秀才と凡人]



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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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