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二百八十一話 [宣告] ページ33

神々の国の首都は、異様を操るものだと思っていた。
だが違った、そんな簡単なものではなかったのだ。



ー異能者の"精神そのもの"を操る、悪魔の力ー



悍しい。
何故精神操作が忌み嫌われるのか理解できた。
対象者を知らぬ間に操り人形にする、そんなことが許される筈ない。



ー私は、日常から他人の心を操っていたー



異能を使う対象者の心を操り、発動させていた。
冷たい汗が頬を伝う、体がカタカタと震える。



「恐ろしい異能だ、声一つで他者を狂わせる。
…だがな、桁違いの力を持つ代わりに、その代償も他とは比べものにならない」



少女と女性の中間、その美しさを持つAの白い顔から血の気が引くのがシグマには見えた。
雪のような白さの細い喉から発せられる言葉一つで人を狂わせるとは思えない。
だからこそ、真実を告げねばならない。



「このままその異能を使い続ければ…そう遠くない未来、お前は死ぬ」



一瞬、シグマの云っている事が理解できなかった。
死ぬ?なんの話だ。



「なにを、云って…」



「母親と同じように、お前の異能は強すぎるが故に自分自身の体を蝕んでいる。
…何故母親が短命だったか判るか」



「…まさか…」



「そう、お前の母親もまた、強すぎる異能を持った。
器に入りきらない力を持ち、少しずつその命を削っていったんだ」



そして、弱った体に決定打を打ったのがA。
彼女は元から体が弱かったのではない。



「異能に、命を食われていた…」



「…お前も今のままではそうなる。
母親と同じように、若くして死ぬ運命を辿るだろう」



まるで死刑を宣告された気分だった。
目の前がぐるぐる回る。
気を抜いたら倒れてしまいそうだ。



ーあの時の頭痛は、警告だったんだー



あの時だけじゃない、今思えば不可解な事はあったんだ。



ー神々の国の首都を激しく使った日は、どうしてかー



ほんの少しだけ、体が怠かった。
だがそれは仕事の疲れだと思っていて。



ー私の命は、少しずつだが確実に擦り減っているー



それを改めて思い知った。
自分の体のことは自分がよく判るなんて、戯言だ。



「魔女の娘、お前は…このままでは死ぬ」



今時を刻んでいるこの心臓は、いつか止まるかもしれない。
それは明日かもしれないし、来年かもしれない。
ただ一つ、はっきりと判ることがある。



ー私の命は、他の人間よりも短いー



残された時間は、あまり多くないと云うことだ。

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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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