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二百五十二話 [腹痛の止め方] ページ4

探偵社を救う為、運命に抗う為、美しくも犠牲が大きい願いに虫太郎は口角を上げる。



「ならばお前達が今している事が"銀行破り"…という事も承知だな?」



「…」



「此処は政府系の銀行…侵入は重罪だぞ。
しかも部屋の前の二人を除けば警備員は皆一般人だ。
そいつ等も斬り倒す気か?」



敦がゴクリと喉を鳴らした。
やっていることが正しいこととは云えないと判っているから。
虫太郎は敦の顔をじっと見つめ、そして途端に笑顔になった。



「…ふむ、だがまあいいだろう!お前達に従ってやる」



「ッ、ありがとうございます!」



協力をしてくれることが判り、敦が笑顔になる。
脱出路を確認し、四人は部屋から出る。



「…」



だが、虫太郎の本心は協力ではない。
亡き友人が残した原稿、生命の痕跡を脅しに使われて大人しくしている訳がなかった。



「…嘘」



「なっ」



見透かしたような声に、虫太郎がAの方を向いた。
Aには判った、虫太郎が嘘をついていると。
伊達に嘘にまみれた家で暮らしていた訳では無い。



「なん、の話だ?」



Aは虫太郎の目をじっと見つめ、そしてそっと目を伏せた。



「行きましょう、恐らく警備員に気づかれた」



スタスタと歩いていくAの後ろ姿に虫太郎は苦い顔をし、
そしてやはり似ている、と呟いた。
通路に出ると、侵入の為に開けた穴が気づかれ、警備員が増えていた。



「こっちの通路なら監視装置がない、行こう」



もし此処で騒げば警備員に捕まる。
それを狙った虫太郎は突然、腹を押さえて蹲った。



「ぐぬぅぅう!急に腹痛が!」



「だっ、大丈夫ですか!?」



「ああ全然駄目これはもう死ぬかも判らんああああ!」



ゴロンゴロンとのたうち回る虫太郎。
その光景を焦って心配しているのは敦だけで、
Aと鏡花はまるで地面にある石を眺めるような目をしていた。



「…判った」



「仕方ない」



そう呟いた二人に、虫太郎はニヤリと口角を上げる。
だが次の瞬間二人は



「心臓を数秒止める方法がある。
それなら腹痛なんてあっという間に忘れるだろう」



「腹痛に効くツボを知ってる。
腰骨の3センチ上をこれで強めに刺せば別の痛みで腹痛が紛れる」



そう云って、Aは手首を鳴らし、鏡花は短刀を取り出したので虫太郎は急いで飛び上がるのだった。
間違い無く殺る気だった、そう思う。

二百五十三話 [特殊部隊のお出まし]→←二百五十一話 [脱獄への道]



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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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