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二百六十二話 [外で生きられるよう] ページ14

「ちょっと!何なのよ貴方!?」



可愛らしい部屋に響く、モンゴメリの怒声。



「指名手配って!どういう!事よ!」



「痛い!痛い痛い!」



ポカポカと敦を叩きながらモンゴメリは憤慨していた。
その光景に、虫太郎は大丈夫なのかと問う。
だがこの部屋はモンゴメリが選んだ者のみしか入らない鉄壁の守り、世界一安全なのだ。



「て、云うかそもそも…何故モンゴメリちゃんが安吾さんと一緒に?」



「ッ、それは!その、大した理由じゃ…」



モンゴメリの顔がボッと赤くなる。
何か隠したそうな顔に、Aは首をかしげる。



「なにかしたの?」



「な、何もして…ないわよ…」



「保護したんですよ。彼女、捜査本部に乗り込みましてね」



「してるね」



「ッ、何よその生暖かい顔!!」


「手書きの資料片手に『敦君は悪人ではない』『殺人犯なんて間違いだ』とそれは凄い剣幕で。
暴れて捜査官に捕まった所を僕が通りかかり引き取ったという訳です」



「云わないでぇえええ!」



安吾に暴露されたモンゴメリの悲痛な叫び声が響く。
敦は親切だなとしか思っていないが、親切心でここまではしないだろう。



「…それより、答えろ坂口安吾」



少し和んだ空気を引き裂くように、虫太郎が安吾の方を冷たく見据えた。



「私は以前、ある組織に閉じ込められ犯罪の隠蔽を手伝わされていた。
邪悪なその組織は『七號機関』」



その後ろからAも安吾を見つめる。
その眼差しは冷ややかで、敦が反射的に体を強張らせた。



「答えよ、お前は『七號機関』の長か?」



「いいえ」



「では『七號機関』の力を使った事は?」



「!」



その質問に、安吾の静かな表情が乱れた。
そして、何かを決意するように目を閉じ、一言。



「あります」



「…ならばお前に協力する理由は何もない」



長で無くともあの組織の力を使った相手を信用する気は無い。
虫太郎が背を向けた時、



「但し」



絞り出すように彼は再度話し出した。



「使ったのは一度だけです。
四年前…太宰君がマフィアの外で生きられるように」



ー彼の過去の罪を消したー



外で、生きられるように。
それはまるで父が未来を見据えて娘に知識を教えたように。
母が娘の未来を案じて異能をかけたように。
それは、罪の中で生まれた慥かな絆だった。

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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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