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二百六十七話 [哀しき血の末路] ページ19

安吾の言葉に、Aは冷ややかな目を向けた。
日の当たる世界で生きる事が出来なくなる、それはつまり、



「つまり、貴方達はそれを知った私が…"自分たちの敵になること"を恐れた、と…」



「ッ、それは…!」



否定しようとしたが、安吾は違うと云い切れなかった。
彼らは恐れたのだ、魔女の血を、その恐ろしさを。
娘が何も知らない、ただの子どもだと知らずに。



「だから消したかった、私を、いや…忌々しい魔女の血を」



後ろに立つ敦と鏡花の肌が粟立つ。
背中しか見えなくても判る、Aの憤怒。
身勝手な世界に翻弄された少女の、怒り。
一歩、また一歩とAが安吾に近づく。



「不思議だった…魔女としてのあの人と、母としてのあの人は違いすぎる」



まるで別人であるかのように変わった母。



「私は、元は"踏み潰される側"の人間でした。
だからその果てに、その人物の心が歪んでしまうことはよく知ってる…」



低い声の中に、激情が揺れる。



「教えてくれますか、母は…いや、雪はどうしてあんなに歪んでしまったのか」



温度のない瞳。
それを見た安吾は、もはや隠すことは無理だと悟った。
そして、震える口で真実を告げる。



「貴女の、母は…元は"踏み潰す側"では無く、"踏み潰される側"の人間でした…」



それはもう、残酷に。



「元の性格が歪んでしまうほど、何度も何度も踏まれ、手折られた…我々、政府に」



その果てに。



「そして、彼女は壊れてしまった…。
当時の政府が彼女に狙われたのは…因果応報です」


全て、自業自得の結果だった。



「好きなだけ僕らを恨んでください。
貴女にはその資格がある…本当に、申し訳ありません」



政府は魔女の過去を隠し、全て彼女が悪いように云った。
そして、翻弄されたAの怒りは。



「…なら、こうしましょう」



Aの手が安吾のネクタイを掴み、壁に押し付けた。
敦達が制止する間も無く、安吾の額に銃口が突きつけられた。



「母の無念と、私の怒りを貴方に差し上げます」



怒り、哀しみ、その全てが銃口にこもっていた。
安吾の目は驚きに見開かれていたが、
次の瞬間には運命を受け入れたようと静かにその目を閉じた。




「白雪姫の毒林檎のように、理不尽な醜い感情で塗り固められた結末を味わってくださいな」



赤い唇が、哀しい終わりを告げる。
次の瞬間、銃声が響き渡った。

二百六十八話 [本当は知っていた]→←二百六十六話 [子が背負う罪と罰]



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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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