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触れられた、無効化、異能がキャンセルされた、もう戻れない。
数秒の間に色んなことが脳裏を走り去った。







「Aちゃ…!」







後ろから目を覆う太宰の存在に気づいた二人は見なくても判るほど動揺していた。
でも、案外人間とは諦めるのが早い生き物のようだ。
自身の目を覆う太宰の手を引き剥がし、彼の手を近くの壁に押さえつけて叫ぶ。






「走れ!!」







今なら一人で済む、だから"切り捨てろ"。
その意味を先に理解した鏡花は苦しそうな表情をしたのち、
混乱する敦の手を引いて走り出した。







「いいの?置いていかれてしまったけど」







「…どうやってここだと?」







「こっちに来てるかなって…私も賭けたのだよ」







太宰は心底愉しそうにクスクスと笑う。
やはりこの男には一筋縄で勝てる保証なんて無いのだと、改めて理解した。
部下を引き連れていない太宰の両手を壁に押し付け、
優勢に立っていても常に肌が張りつめるような緊張に襲われる。







「あの二人に手を出したら許さない」







心臓そのものを抉り取られるように冷たく、それでいて熱い眼差しに太宰は更に口角を上げた。
華のような美しさを持ちながら、誰にも媚びないその姿は太宰の興味をそそらせるには十分すぎるものだったのだ。







「うん、やはりその目は私に向けさせたい」







突然、太宰の顔がぐっと近くに寄った。
深淵を思わせるような瞳に、一瞬意識が逸れ手の力が弱まった瞬間、
体が一回転させられ、両手を一纏めにされ、壁に押し付けられた。







「ッ…」







いくら体術に優れていても、男女の力の差は歴然。
振りほどこうにもビクともしない。
悔しさを悟らせぬように、太宰を睨みつける。






「ッ、ふふ…凄いね。
自分をどんな目に遭わすか判らない相手を目の前にして気丈で居られるなんて。
泣いたりしても良いのだよ?」






「それなら、そこらへんのゴロツキでも小突けば?
生憎私は、怖ぁいマフィアに睨まれた程度では泣けないんでね」







相手を翻弄するような、ゾッとするほど美しい表情でAは嘲る。
追い詰められようが、泣かない。







「…綺麗だ」







「は?」






黒い髪が、白い肌が、赤い唇が、紫の瞳が、そして何より、その意思が。
太宰の表情がまるで恋をした生娘のように綻んだ。






「私は君が欲しい」






まるで、愛する人を抱擁するように太宰はAの体を捕らえたように抱きしめた。

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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

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