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太宰は、目の前で無防備に眠る少女の頬に触れた。
閉じられた目の下には涙の痕があった。







『あの日もこんな風に泣いていたな』







初めて会った日、気絶したAを自分の部屋に運んだ時。
彼女は夢の中でずっと苦しんでいた。
涙を滲ませながら、子どものように泣いていた。







『君はもう一人じゃないのに』







あの日から守ってやろうと思った、そばにいてやろうと思った。
意地っ張りで気が強く、誰よりも一人を恐れている少女を導こうと。







「…流石にこの体勢はまずいか」







こんなに近くにいると朝起きたら殴られそうだ。
起こさないようにそっと動こうとすると、







「ん…」







Aの手が太宰の服をつかんだ。
赤子が親を求めるように、離さなかった。
行かないで、そう云うように。







「…家族なんかじゃないのにね」







名前のつけられない、それ以上でありそれ以下である関係。
他人でも無ければ恋人でも、家族でも、友人でもない。
それがもどかしいと思った事はある、でも。







「…今はそれでもいいか」







穏やかな表情で眠る少女を見て、太宰は諦めたようにため息をついた。
そして、眠る少女を抱き寄せて、自身も目を閉じる。






『今だけは、何も知らない子どもで居ればいいさ』








雨の音はもう聞こえなかった。









ピロリン







翌朝、いつもより二時間遅い時間に目が覚めた太宰は、
珍しくまだ寝てるAを抱きしめながら携帯を見た。
そこには国木田の着信が入っていた。







『報告がまだだ。なにがあったか報告しろ』








ボサボサの頭をかきながら、太宰はまだ回らない頭で文字を打つ。
そして、送信すると携帯を放って再び夢の世界へ行った。







『Aはどうした』







『私の隣で寝てる』







面倒くさいので電源を切った。
その一時間後、珍しく爆睡したAはなんとなく携帯を見て、悲鳴をあげた。







「太宰さん、ちょっとなんですかこれ!!」







「…んぇ?」








もはや同じベッドで寝てて恥ずかしいとかそんな事どうでもよかった。
Aの携帯には凄まじい数のメールが。







『同じベッドで寝ましたの?進展は?』







『説明しろ』








『流石にアウトだ』








二人は顔を見合わせて青くなった。
太宰の誤解を招きまくった言葉により、二人は朝から頭を抱えるのだった。

花見は静かに行うものです(?) [桜様リクエスト]→←*



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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

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