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ピチョン、と頬に冷たい液体が落ちてくる感覚で目が覚めた。
感じるのは、寒さ。






「ッ、…ここ、は…」






Aはようやく開いた目で辺りを確認する。
薄暗い、埃と錆のにおいが漂う路地裏だった。







「何故……ッ、敦!鏡花!」






視線を落とすと、地面に倒れる敦と鏡花を見つけた。
まさかと思い、呼吸を確認するが規則正しい寝息が聞こえ、ホッとした。







「一体ここは…」







路地裏か、ヨコハマなのだろうか?
辺りを警戒しながら見渡していると、二人が起きた。
そして、驚いた顔をする。






「こ、これは…?」







「異能による瞬間移動…?」







「…その可能性はある、携帯が通じない」







圏外と表示された携帯を胸ポケットにしまう。







「兎に角、通りに出てみよう、なにか判るかも」







敦は不安げに、鏡花はコクリと頷いた。
ある程度路地を歩くと、ピタリと敦の足が止まる。







「誰か…いる?」







鏡花の手が静かに短刀に触れた。
Aも拳銃を取り出し、警戒態勢に入る。







『それにしても、ここ、見覚えが』







一歩、また一歩と歩いていく。
すると、敦が「あっ」と安堵したような声を上げた。







「太宰さん!」







「…」







そこには、黒い外套に身を包んだ太宰がいた。
彼も巻き込まれたのかと、敦はホッとする。
鏡花も静かに短刀をしまった。







「良かった、太宰さんも無事だったんですね」







「…君は」







一瞬、太宰の表情が曇った気がした。
だが、次の瞬間にはいつもの笑顔に浮かべ、笑っていた。







「良かった、そっちも無事みたいだね安心したよ」








「はい、良かったです」







「…?」







「どうしたの?」







Aは何故か、敦のように太宰に近づけなかった。
その様子に、鏡花が不思議そうな顔をする。







『なに…この違和感…』







まるで、他人を見ているようだ。
太宰を見ているはずなのに、太宰ではない気がする。







「Aちゃん、これから太宰さんと四人で行動しよう、そうすれば」







「違う」







「え?」







違う。
違う、太宰ではない。
いや、自分の知ってる太宰治ではない。







「貴方…誰?」







得体の知れない恐怖が湧き上がる。
敦も鏡花も気づいていない。






「その人…私たちの知ってる太宰さんじゃない」







黒を知れ、その意味を身をもって知ることとなる。

*→←あの日の黒を知れ [奈美様リクエスト]



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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

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