検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:237,306 hit

ページ3

違う、そう叫んだAの目はしっかり太宰を捕らえていた。





「な、なに云ってるの?」







「敦、違う、その人は太宰さんじゃない」







「あの人に、見える」






鏡花すらも見抜けない。
だが判るのだ、この人は違う人だと。







「そうだよ、私は太宰治に間違いない」







ね、と笑う太宰に感じたのは、寒気。
深い闇、深淵、そんな言葉では云い表せないような黒。







「なら…私の名前、云えますか?」







太宰を見つめて問う。
一瞬、二人の間の空気が揺らいだ気がした。







「…太宰さん?」







なにを返さない太宰に、敦が胡乱げな顔をした。
皆の視線が集まる中、太宰の唇が…弧を描く。







「ッ、敦!!」







Aの手が敦の腕をつかみ、そのまま彼を地面に倒す。
そのコンマ数秒後、敦の頭があったところに死の矢が飛んできた。
銃弾、油断していた敦の頭を砕くには十分な兵器。







「うふ、ふふふ…正解、大正解だよ」







太宰は後ろからやってきた黒服達の前に立ち、"愉しそうに"笑っていた。
ゾクリと嫌な感覚が湧き上がってくる。
彼は黒い外套をはためかせ、仰々しく頭を下げた。







「私は太宰、太宰治だ。…ポートマフィアの五大幹部をしている」







にっこりと笑う、悪魔のように美しい男。
やはり、彼は今の太宰ではない、少なくとも四年は昔の太宰なのだ。
敦を庇うように、太宰を睨みつける。







「私は君達なんて知らない。
…それなのに私を知っていて、剰え君はそれを見抜いた。
ふふ、不思議だ、本当に不思議だよ」







彼が目で合図すると、黒服二人がAの腕を掴んで立たせた。
嫌でも太宰と目を合わせる体制になってしまう。







「さて、君達はマフィアに捕まり、尋問を受けるわけだがなにか云い訳はあるかな?」







黒を知れ、その意味が判った気がする。
ポートマフィア最年少幹部、その存在にわずかに鳥肌が立った。
だがAはそのまま太宰をにらみ、そして、赤い唇を引き上げた。







「よかった、私の目が…ちゃんと貴方とあの人を見抜けて」







その瞬間、Aの右足がマフィアの構成員の腹を蹴り上げる。
そしてそのままの遠心力でもう一人を蹴り飛ばした。






「生憎、捕まってやるつもりは無いんでね」







その少女は、美しく、それでいて壮絶に笑った。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (235 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
559人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。