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電話に出た、いつもの太宰の声に人知れず安堵する。






『大丈夫かい?なにかあった?』






「あったといえばありましたが…今はどういった状況ですが」







『…少し厄介なことになった』







「…やはり、今は四年前ですか」






『あぁ、あの異能者は「対象を過去に飛ばす」能力者なんだ。
私が本人に触れてないと発動が阻止されないタイプだよ。
そして、飛ばされたのが四年前のヨコハマ。
私は国木田君と飛ばされたようだ』






「過去に、飛ばす……国木田さんは」







『私の異能は無効化だ。
国木田君に触れたら、彼は消えた。
つまり能力がキャンセルされて元の時代に戻ったのだろう』






「じゃあ太宰さんに触れれば戻れるんですね!」







敦の嬉しそうな声に、Aは静かに目を伏せた。
キャンセル能力なら、『過去に来た』と云うことをキャンセルできる。
でも、だとしたら…キャンセル能力そのものの、彼は?






「…貴方は、どうやって戻るんですか」







『…考えはあるさ。心配いらない』







「別に心配してないです」







『はいはい』







いきなり恥ずかしくなり、すぐさま否定した。
電話越しに太宰の含み笑いが聞こえた。







『あ、そうだ最後に一つ。注意してほしいことがある』







「注意してほしいこと…?」







『この時代の"私"に触れることは絶対に避けた方がいい』






空気が凍りついた。
この時代、つまり先ほど会った太宰のことだ。







「それは…なぜ」







『この時代の私に触れられるということは、
『過去から来た』ということそのものをキャンセルされる可能性が高い。
それはつまり、かけられた異能そのものが解除されるのだよ』







「つまり…元の時代に…」







『そう、戻れなくなるんだ』







ゾッとした。
あの時、下手したらAは太宰に触れていた。
そうなっていたら、その時点で終わりだったのだ。







「…さっき、貴方に会いました。恐らく顔を覚えられた」






『…まずいね、会ったら逃げたまえ。戦闘は避けて、私は今…』







ザザッと携帯にノイズが入る。
同時に、肌が粟立つような感覚がして、携帯を切って、敦と鏡花の口を押さえた。






「なっ」






「シッ、静かに」







ドクンドクンと心臓がうるさい。
それ以上に、あの音が耳に響く。







「さぁて、何処かなぁ」







冗談じゃない。
暗闇の向こうに、黒の鬼が見えた。

*→←*



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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

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