【文スト】この世界と番外編 その十三

黒の組織との邂逅 ［HANON様リクエスト］ ページ25

(こちらは名探偵コナンとのコラボになります、詳しくは『小学生探偵と異能力者』をお読みください)






「バーボン」







「…お酒の名前ですか？」






米花町での一悶着の後、日常が戻ってきた。
意味ありげに太宰の呟いた言葉は、酒の名前だった。






「うーん…気をつけるべき名前かな？」







太宰はそう云うと、ニコリと笑む。
彼がこうして微笑む時は大抵ロクでも無い事が起こる。






「あと、綺麗な人には気をつけて」







例に漏れず、綺麗な顔をしている太宰は、仕事に向かおうとしたAにそう云った。
その言葉がやけに耳に焼き付いていた。
外は雨が降っていて、裏通りのせいかやけに人通りが少ない。







「…酒の名前、か」







最初に太宰が云っていた酒、バーボンはウヰスキーだ。
かつて父は死ぬほど酒が弱く、カクテルでぶっ倒れたりするのもよくあった。
だが母が酒に強かった名残からか、部屋には有名な酒の瓶が飾られていた。
だから、一応の知識はある。







「ウヰスキーと云えば…ウォッカとか？」







そこまで考えて、Aは「何考えてるんだか…」と呟く。
また太宰の悪戯に付き合わされただけかもしれない。
第一、酒の名前がなんだと云うのか。







「例の件はどうなった」







「へい、滞りなく」







パシャ、と革靴が水たまりを踏んだ。
傘をさしているせいで前がよく見えなかった。







『酒…そう云えばお母さんが気に入ってた酒って結構あったな』








林檎酒が一番好きだったらしいが、他にもお気に入りの酒はあったらしい。
その中でも最も覚えやすかった酒は。








『あれは確か…』








傘の間、向こう側から人が歩いてくるのが見えた。
靴の大きさからして、男性、それも二人だ。
ぶつからないように避ける。
その時、ふと思い出した。







「ジン…」








瞬間、腕を掴まれた。
咄嗟のことに驚き、傘を落としてしまう。
黒いサングラスをかけた大柄な男が驚いた声をあげる。







「兄貴、どうしやした！？」







「…今なんて云った」








その者は、銀色の髪を背中まで伸ばした、長身の男だった。
黒い帽子から覗く目を見た瞬間、判ってしまった。








ーあちら側の人間だー








その証拠に、手には銃を持つ者にしか無い跡があった。
そしてなにより、あちら側人間特有の目。







『あぁもう、最悪だ』







冷たい雨の中、Aが出会ったのは黒の男だった。

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