【文スト】この世界と番外編 その十二

二人の白雪姫、苦手なこと ［シアトル様リクエスト］ ページ1

ある日の探偵社。






「うわぁぁぁぁあん！！」






客室に響き渡る、幼い子どもの泣き声。
それは探偵社の厚い壁をぶち抜けて下のうずまきにまで聞こえたらしい。







「おねぇぇちゃぁあん！！」







「ほ、ほらぁ、手品だよ、ほら…」







「うわぁぁぁぁん！！」








オレンジ色の、ふわふわした髪の幼女をあやすのは、探偵社員の谷崎だ。
彼は先程から彼女のご機嫌とり係になっている。







「国木田さん…無理です…」







彼女は、ある事件の現場に取り残された迷子だったのだが、
親も見つからないので一時的に探偵社が預かっているのだ。
しかし、泣いてばかりで親の名前どころか自分の名前も云えず、先程からお姉ちゃんとしか云わない。







「よし、A、いけ」







「…私ですか？」







「今暇なのは唐変木とお前しか居らん。頼んだぞ」







Aは苦い顔をしたが、子どもは嫌いではないので素直に従った。
ちなみに太宰は「暇だから私も」とついていく。







「よろしく、私は…」








「うわぁぁぁぁん！！」








「…お名前、云えるかな？」







「おねぇーちゃんー！！」







一瞬で思った、これ無理だ。
そもそも子どもは好きだが自分は子供に好かれないタイプなのだ。






「…どうする？交代してもらう？」







ニヤニヤ笑う太宰を睨む。
負けず嫌いなAには交代なんて文字はない。







「意地でも笑わせてみせます」







小泉A、十八歳。
習い事や勉強ばかりをしてきた為、無駄な知識が豊富な元女子高生。







「やってみせます」







その時、客間の外にはのんびりした空気が流れていた。







「Aさんってなんでも出来そうですよね」








「あぁ、なにやっても上手だしね」







「…苦手なことってあるのかしら？」







ナオミが大真面目な顔でつぶやく。
なにをしても余裕そうで、涼しい顔のA。
彼女の苦手なものとは…。







「うわぁぁあぁん！！」








「あっははははは！！」








瞬間、客間から少女の泣き叫ぶ声と太宰の笑い声が響いた。







「ちょ、待ってよこれ！みんな見てみて！！」







「待て！！止まれぇ！！」







客間から飛び出してきた太宰の手には、一枚の絵が握られていた。
それは…あまりにも不気味な絵で場が凍りついた。







「これAちゃんの作品！！」







仲間が二度見したのは云うまでもない。

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