【文スト】この世界と番外編 その九

＊ ページ2

やりたいとは云ったが、結果見るだけでいいとエリスは云い、それを見ている。
枕投げ、とは投げる者が投げればかなりの威力になる。
それを知ったのはゲーム開始二秒のこと。






ガツッ！！







「あ、悪ぃ、力加減ミスった」







中也の放った枕が、国木田の顔面に直撃して彼が吹っ飛んだ瞬間。
背が高い彼だからこそ、中也の目に止まったのだろう。







「く、国木田さぁぁあん！！」







敦の悲痛な叫びが響くが、国木田はピクリとも動かない。
脱落、同時に気絶。
自分たちの陣地に布団で壁を作る前の悲劇である。







「流石脳筋ゴリラだねぇ、私もあれは受けたくないよ」






「んだとコラァ！！」







「冗談抜きであれ受けたら骨折れます」







冷静に分析するAの顔は、目が死んでいた。
攻撃側になれたはずの国木田の離脱はなかなか手痛い。
異能も使えないとなると、敦も賢治もそこそこといったところだし、相手はなにより武闘派も多い。
これは先手を打たれた。
布団の壁には先程から凄まじい速度で枕が当たっている。
しかも反動で枕は相手陣地に戻るので余計タチが悪い。






「試しに一球、投げてみても？」







「あぁ構わないさ」







試しに枕を投げるのはリスクが高い。
それでも、例え試しでも効果があると知っている太宰はニッコリ笑う。
Aは敦から枕を受け取り、当たらないように瞬時に立ち上がり、思い切りそれを投げた。






ブォン！！







「…ひぇ」







凄まじい勢いのそれは、樋口の頬を掠めて壁にはぶち当たった。
あまりの速度に部屋は一瞬静まり返る。






「…当たったら死にます！！」







樋口の叫びに誰もが思った。
Aは女だが、身体能力がかなり高いのだと。
身体能力か高かった父に色々教わったせいか、それとも容赦のなさがなせる技か。
どちらにせよこれは双方当たれば死ぬ球が存在することになった。






「鏡花」








Aの声にハッとする。
だが気づいた時には既に遅く、反対側から飛び出した鏡花が銀に枕を当てた後だった。
全て、作戦のうちだったのだ。







「うふふ、これで双方同じ数だねぇ」







太宰の楽しそうな声に中也は眉間を引きつらせた。
双方のプライドと信念が激突するゲームは、まだ始まったばかりだった。






「…女将さん、さっきからお客様の部屋から爆音がするのですが」







旅館の仲居がそんなことを噂してるとは知らずに。

＊→←探偵社とマフィア、枕投げ対決 ［夜叉夜叉様リクエスト］

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す