【文スト】この世界と番外編 その九

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プライドと欲望にまみれたカラオケ大会がスタートした。
一番手の中也の時から太宰が彼の飲み物に劇物を入れての妨害が入り、乱闘になりかけた。
歌は最初に聴いたようにとてもうまく、点数は97点だった。
二番手の敦は慣れていないせいかかなり音程を外して、75点。






「ふっ、獣の遠吠えだな」







「はぁ！？お前だって咳き込んで歌えてなかっただろ！！」







「そこ二人、大人しくしろ」







その次の芥川は咳き込んで歌どころではなく、測定不能。
その敵討ちと云わんばかりに樋口が歌った。






「…恋愛ソング」







「その目をやめてください！！」







切なくも甘い恋の歌は誰に向けたものなのか。
樋口の歌はそれなりに上手く、82点。
その次の国木田は、なんというか予想通りだった。






「学校の卒業式で歌う歌ですか…」







元数学教師だからだろうか、変に似合っていた。
低い声も力強く、点数は89点。
その次、紅葉の演歌はかなり上手く、着物のせいかとても似合っていた。点数は94点。
次の鏡花も、可愛らしい歌声で敦と同じ曲を歌っていて、紅葉がべた褒めしていた。
そして、その次が凄まじかった。






「盛り上がってるかーい！！」







テンションMAXの梶井、自作の檸檬の歌を歌う。
当然、測定は不可能だったが勢いだけなら満点だった。
その次、太宰の番で彼は本気だと云わんばかりの歌唱力を披露した。






「…上手いですね」







声が良いせいか、無駄に上手い。
点数は97点で、中也と共に双方舌打ちをした。
最後はA、彼女が二人の点数を超えなければ優勝はこの二人になる。
すると、フーと息を吐いたAがマイクを握る。
そして画面に映し出された曲名を見て、皆が目を見開いた。







「…国歌」







鏡花の小さい声と共に、曲は始まった。
聞き慣れたその音楽と共に、Aが口を開く。







「…上手いね」







「あぁ…国歌選んだ時はこいつマジかって思ったけど…上手い」







透き通るような、母親似の美しい声に太宰と中也はそう呟く。
だが歌っているのは国歌。
彼女らしいと云えば、らしい。
そして短いその歌を歌い終わると、点数が出た。







「98点…優勝だ！」







静かなる勝利。
最後は国歌の一人勝ちで、Aはマイクを持って一言。







「全員、解散」







こうして、カラオケ大会は御開きとなった。
小泉A国歌完全勝利の伝説を残して。

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