【文スト】この世界と番外編 その七

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弱みを握りそれをネタに脅せば勝てると思っていた。
だが甘かった、相手も全く同じ方法を考えていたとは。






「は…寝言…？私がそんなこと云うわけ」






「うん、だから珍しかったんだよ。
どうしよっかなぁ〜私負けたら間違えて再生ボタン押しちゃいそうだなぁ〜」








「ぐっ…」







まさか、自分が寝言なんて云うはずがない。
だがこの太宰の態度から見るに多分云った。







「…私だって負けたらあの人に連絡先ぶちまけそうです」







「うんうん、でも私はこれを皆の前で公開するよ？」






さぁさぁどうする、と楽しそうに笑う太宰と今にも飛びかかりそうな目つきで睨むA。
単なる遊びの筈が、いつのまにか究極の心理戦になっていた。







「ま、兎に角ゲームを始めよう？
私はグーを出すから、君は好きなのを出したまえ」






いつでも再生できるように携帯を上に置き、太宰はうふふと微笑む。
つまり、ここから先はAの選択次第。







『どうする、勝てば恥をかくし、負ければ仕事を押し付けられる。
じゃんけんだって、グーならパーを出せば勝てるがそう上手くいくか？
グーと見せかけてチョキかもしれないし裏をかいてのパーの可能性もある…』







裏の裏の可能性もある。
無限に感じられた時間の中、Aはフッと肩の力を抜いた。







『よし、諦めよう、勘でいく』








頭で勝てないなら勘で勝負。
そう判断したAの決断は早く、太宰が彼女の思考を読み取る前にじゃんけんの掛け声を始めた。







「じゃーんけーん」







読みを放棄して勘でいったAと、それすらも予測していた太宰。
その勝負に乱歩と与謝野が賭けを始めた瞬間、







にゃおん







ポチッ







開けっ放しにしていた窓から三毛猫が入ってきて、太宰の携帯の上に乗る。
そして、運悪くその前足は再生ボタンを押した。







『…ん…ぅ…違う、私は貧乳じゃな…』







バシィィィン…








その、あまりにも不可解な寝言が再生された瞬間、太宰の脳天にハリセンが直撃した。
気絶する太宰、ハリセン片手に暗殺者顔負けの目をするA。
太宰が床に倒れる音と共にAは彼の携帯を真っ二つにして一言。







「…死ぬ」







そう云ってAが窓から飛び降りようとしたので、近くにいた国木田と敦は全力で止めた。
その後、勝負は引き分けとなったが暫くAは部屋の隅で蹲っていたそうな。

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