手負いの少女と魔人[あき様リクエスト] ページ46
しくじった。
熱を持ったように熱い傷口を押さながら、冷たい壁に手をつく。
「ッ、…」
ズキン、と一際大きい痛みが腹部に走り、壁にもたれかかる。
痛みの走る部分を見てみれば、砂色のベストは真っ赤に染まり、自分が歩いたところは点々と赤い印ができている。
「まず、いな…これ…」
腹部の傷、銃で撃たれた傷を圧迫しながらAは唇を歪めた。
数刻前、いつも通りに道を歩いていたのだが、そこで襲撃にあった。
いつもなら軽くいなすのだが、相手は外部から暗殺者を雇っており、
それに気づいた時には脇腹を銃弾が貫通していた。
裏道と相手の作戦を読んで逃げているが、手負いの為にうまく動けない。
携帯も先程の諍いで落としてしまった。
『早く連絡しないと本当に手遅れになる』
真っ赤に染まる傷からは血が流れている。
こういう時、戦闘向きでない自分の異能が恨めしい。
それでも、なんとか進もうとするが数歩進んだところで視界がぐらりと揺れた。
『あ、やばい』
近づく地面に目を閉じた時、誰かに抱きとめられる感覚がした。
Aは真っ青な顔で自分を抱きとめた人物の顔を確認しようと顔を上げる。
すると、自分と同じ、紫色の瞳と目が合った。
「随分追い詰められてますね」
「魔、人、ドストエフスキー…」
自分を受け止めた男はニコリと貼り付けたような笑みを浮かべる。
魔人、ドストエフスキー。
過去の因縁もあり、今絶対に会いたくない相手。
いつもなら突き飛ばすなりするのだが、Aの手はダラリと下がっているだけ。
「…絶命まで15分といったところでしょうか」
「…」
あぁ、やはり深手なのか。
15分、この男なら15分くらいの間なら自分の動きを封じ込められる。
死んだな、とAは抱きとめられたまま力なく拳を握った。
「毒林檎を食べた白雪姫のような白さです」
ツッ…とドストエフスキーの細い指がAの頬を撫でた。
それにも抵抗できず、素直に受け入れる自分が憎い。
「さて、僕なら貴女を助ける事が出来ますが、どうしますか」
あぁ、成る程、助かりたくば悪魔に魂を売れと。
真意を理解したAはフッ、と真っ赤な唇を歪めた。
「助けは、いらない…、
それに…死ぬ時、一人でないだけ…まだ救われてる…」
らしくもない弱音を吐いた瞬間、躰から力が抜けた。
最後の一瞬、魔人の紫の目と目が合った気がした。
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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時