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モンゴメリの言葉に雪は白々しく「まあ」と云う。





「亡くなってしまったんですか…残念です」





「あたしも詳しくは知らないけど…その、仲間を庇って、亡くなったらしいわ」





そこで知ったのは、自分の死は仲間を庇ったことが原因だと云う事実。
感情が腹からせり上がってくる。






「そうですか…貴女は彼女のご友人ですか?」






「…違うわ」






雪の言葉にモンゴメリは目をふせる。
でも、と云いトレーを持つ手がカタカタとふるえていた。






「でも、あの子は…素敵な子だったわ」






「…」






「敵だったあたしの事も何も云わずに受け入れてくれたし…
前に貴女の髪はあたしと違って黒くて綺麗ねって嫌味云ったらあの子…」






飲んでいる珈琲の味がしない。
なんだか、酷い御伽噺を聞かされている気分だ。






「『貴女の方が御伽噺の女の子みたいで綺麗じゃない』って、当たり前のように云ったのよ」






嗚呼、確かに前、そんなことを云った記憶がある。
でもそれは励ますつもりも慰めるつもりもない、ただの言葉だった。
なのに、






「太陽みたいな、綺麗な髪だって…。
あたし、こうなる前に…あの子とお友達になりたかった」






でも、もう彼女はいない。
この世界ではもう死人なのだ。





「…ごめんなさい、変な話したわ。ゆっくりしていって」





「えぇ、ありがとうございます」






「…あの子もよく、その珈琲頼んでたわ」






そう云い残し、モンゴメリは戻っていった。
彼女とは交流という交流は無かった。
うずまきに来たら軽く話す程度。
でもそれが、彼女には嬉しいことだった。






「貴女、愛されてますね」






「…もういい、出よう」






悲痛な顔で立ち上がるAに雪はあら、と笑い、ミルクティーを飲んだ。
机にお代を置いて、うずまきから出る。






「はぁ…」






湧き上がる気持ちの悪さにため息をつくと、ふと雪が地面に敷かれている石畳の一点をじっと見つめていた。






「…あぁ、ごめんなさい。行きましょうか」






ちょうど、屋上からなにかを落としたらそこに落ちそうな位置だった。
怪訝に思いつつも歩き出すと、ふと、白い髪の青年と赤い着物の少女とすれ違った。
見慣れた二人の表情は…どこか暗かった。






『なんで、そんな顔してるの』






自分一人消えた程度でこうも変わるものか?
脳裏に浮かんだおこがましい考えをかき消すようにフードを深くかぶり直した。

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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時

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