【文スト】この世界と番外編 その七

包帯男と出られない部屋 ［あい様リクエスト］ ページ38

見慣れた、白く出口のない部屋。
もう何も思うまい、ただ、相手がまともでありますようにと願うだけ。





「あれ…私川に飛び込んだ筈なのだけど」






「今回は太宰さんか…」






「なんだいその、くじ引きで五等が当たった時のような微妙な顔は」






目の前に現れる、さらっと入水発言をかました上司にジト目を向ける。
面倒だがこの詳細を説明すると「なにそれ面白いじゃないか！」と乗り気になりげんなりする。
そんな面白いものじゃない、毎回吐血しないのが不思議なくらいだ。






「うふふふふ、お題なんだろうねぇ」





「楽しそうですね…」





「だってここなら(不可抗力で)君、従うだろう？」






「なんか副音声で変なこと聞こえた気が…」





何故か感じた寒気に首を傾げる。
すると、モニターが点灯した。






『それでは、お題の発表です』






「さぁ、面白いの来たまえ！！」






「この人すごいな…」






『お題は…どちらかが給仕服を着て仕事をしないと出られない部屋』






その瞬間、Aは膝から崩れ落ち、太宰はガッツポーズを決めた。
暫く、微妙な空気が漂う。






「給仕服って…なんですかねぇ…」






「カタカナ表記するとメイド服だね」






非情な太宰の言葉に笑いすら溢れてくる。
着ろと？あの、かつて鏡花が来たばかりの時のようなものを、私が？
巫山戯るな埋めるぞ、床にギリギリと爪を立てていると、クローゼットのようなものが現れる。






「着替えは見ないから安心したまえ」







「見たら殺す」






「いつもより殺意五倍増しだぁ」






ズンズンとキレ気味にクローゼットに近づき、扉をバァンと開ける。
すると、Aの動きが止まった。






「…どうしたの？」







「…二着ある」







「え」







「メイド服が、二着…サイズも、一つは女性用でもう一つは…かなり大きい」







そこで双方ハッとする。
天の声は、どちらがメイド服を着るとは指定していない。
そして、クローゼットに入っている、"男性でも着れそうなメイド服"。






「…太宰さん、貴方もターゲットから外れてはいない」






「…嘘だ」






「もう一回話し合いましょうか、えぇ」






クローゼットからフリルが大量についたメイド服を取り出し、床に投げる。






「貴方だけ楽に逃げようなんて、そうはさせない」







この部屋、予想以上に鬼畜だと、太宰は目元を押さえた。

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