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ページ34

抜け落ちた記憶は、なによりも大切なものだった。





「幼少期はその人の性格を形成すると云っても過言ではない。
その記憶も無いなら、性格、いや、人そのものが変わったと考えるのは普通だろう?」





Aは魔女と同じ性質を持っていた。
だがそれが表に出てこなかったのは、幼少期に父が道徳や人としてのあり方を教えたから。
娘の本質に気づきつつも、道を踏み外さないように。
それが小泉Aと云う、ひとりの少女を作り出していた。
だがそれが消えた今、残るのは魔女以上に危うい、好奇心と探究心で人を惑わす狂気だけ。





「今の君はAちゃんじゃない。
まったく…あの子のお父さんには感謝してもしきれないよ」





「へぇ…前の私の方が好きなんだ」





「あぁそうさ。今の君はなんというか…同族嫌悪以上に気に入らない」





太宰がゆっくり近づいてくる。
そして、Aを見下ろす形になるまで近づいた頃には二人の距離はほぼ無くなっていた。





「貴方…怖い顔するんだね」





「悪いね、今の君は好きじゃないんだ」





「へぇ、それで?記憶を戻す方法なんてあるの?」






「…方法ならあるさ」







すると太宰は小瓶に入って液体をぐいっと口に含むと、そのままAの顎を掴んで、






「…ん?」






Aの唇に己の唇を押し付けた。
突然の事で驚き、かなり強めに胸ぐらを殴ってくるがお構いなしに液体を流し込む。






「〜ッ!?」







ある程度飲ませたところで、Aの体がガクンと崩れ落ちた。
太宰は倒れる少女を抱えつつ、口元を拭う。






「いやぁ、試してみるもんだね」






ほらほら起きなさい、とAの頬をぺちぺちと叩く。





「…まっずい」






「効果はあったよ」






「なんですか、これ…」






「私特製オリジナルドリンク」






そこまで云うと、澄んだ紫色の目が開いた。
それを見て、戻ったと確信する。






「忘れてた時の記憶ある?」






「凄まじい味のもの流し込まれた記憶しか」






「…うん、通常運転でなにより」






あれは覚えてない方がいいなと思いながら太宰はいつものAに笑いかける。






「ま、とりあえず良かった」






「…なんだかとてつもない黒歴史を作った気がする」





「残念、気のせいじゃないんだなぁ」






「…辛い」






やっぱりこっちの方がいいな。
太宰は人知れば笑い、Aを連れて屋上を後にするのだった。

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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時

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