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敦が探偵社で仕事をしていると、携帯が鳴った。
見てみると、着信は出張で遠くに行っている乱歩からだった。




『やっほー、そっちはどう?僕が居ないとさぞや仕事がしにくいだろうね!』






相変わらずだなぁと思いつつ、敦は乱歩にAのことを話した。
彼女が記憶喪失になっている事、それでも難なく過ごせている事。






『…ふぅん、そう』






「それで、多分問題はないと思うんで一応報告だけ」






『A、なんて云った?』






「はい?」






『病室に入ってきた君達を見て、まずなんて云った?』






いきなり張り詰めた乱歩の声に敦はえっと、と記憶の糸を手繰り寄せる。
確か、病室に入った時彼女は





「はじめましてって…云ってました」





『…』






「あの、それがどうかしました…?」





電話の向こうの音に耳をすませ、敦は緊張で喉を鳴らす。






『…今、Aは病室で一人か?』






「はい、一応護身用に拳銃は持たせてあるらしいですが…」







『最悪…今すぐ行ける奴だけでAの病室に行くんだ』







「え…やっぱり何か問題が!?」







『行けば判る、だけど油断はしない方がいい』







そう云うと乱歩はまた掛け直す、と電話を切った。
訳が判らない敦だったが、あの乱歩の言葉なので急いで社にいる者に声をかけ始めた。






「本来なら面会時間を過ぎたら面会は出来ないんですよ」






「済みません!でも、なんか…大変みたいなんで!」







敦の云い分に看護婦は、はぁ?と眉を寄せる。
薄暗い病院の中、廊下を進むと小泉と書かれた病室についた。







「夜遅くにごめん、ちょっと話せるかな」







扉の向こうに声をかける。
が、返事はない。寝ているのだろうか?
すると、鏡花が低い声を出した。







「違う…人の気配がない」







そのまま鏡花が勢いよく扉を開けると、部屋には誰も居なかった。
窓際の扉が全開になり、カーテンを揺らしながら青白い月を映している。







「い、ない…?」







窓際に駆け寄ると、シーツが縛られ、地面にまで降ろされていた。







「ッ、兎に角探すぞ、そう遠くには行ってないはずだ」






国木田が病室から出て行こうとする、その時、ベッドの上に自分の手帳を見つけた。
いつのまに落としたのだろう、そう考えてそれを拾う。
誰も気づかない、引き出しの中に入れられていた拳銃が消えていることに。
誰も、何も。

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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時

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