【文スト】この世界と番外編 その七

＊ ページ25

突如現れた襲撃者に男達は顔色を変えた。
そんな彼らに武装探偵社の手帳を見せる。





「おい！こいつら捕まえろ！！」





数名の男がAに向かうが、それより早く夜叉白雪が峰打ちで男達を気絶させる。
彼女は異能こそ強いが異能力者でないと発動しない。
だから、自分が男達をやろうと思ったのだが、







ダァン！！







凄まじい音がして、見てみればAが大男を思い切り投げ飛ばしていた。






「…私がやるのに」






「大丈夫、私だってこれくらいはできる」






そう云っている間も男を軽々と投げた。
自分も負けじと夜叉白雪に一掃させ、培った暗殺術で気絶させる。






「くそッ…なんなんだお前ら！！」






最後の一人が、拳銃を取り出した。
その銃口は、Aに向いていた。
鏡花は血の気が引くのを感じ、夜叉白雪を向けようとするが、間に合わない。
すると、Aは拳銃を持つ男を見て、何故か自分の拳銃を落とした。






「撃てばいい」







Aにしては驚くほど優しい声。
鏡花は勿論、男も驚いた顔をする。






「私を撃てばいい、お前がその指を曲げれば銃弾は私の脳を撃ち抜く。
そうすれば憎い探偵屋の社員を一人葬れるし、うまくいけば逃げられる」






一歩、Aが歩みを進めた。
危ない、やめて、そんな言葉が喉で詰まる。






「薬を取引する以上、それくらいの覚悟はあるだろう？
なに、直ぐに忘れる。"身勝手で殺した女"の存在なんて」





男の顔がひきつる。
カタカタと銃口が揺れていた。





「私は恨まない、所詮、得は他人の犠牲に成り立つものだから。
あぁでも…私を殺した後はきっと凄惨だろう」





紫色の目が笑った。
一瞬、その姿が別の人に見え、目をこする。
まるで、彼女によく似た別の悍ましい存在に見えた。






「この街で薬を売れば表も裏も黙ってない。
軍警も動くし、嗚呼…あとポートマフィアも黙ってないな。
彼らは薬は御法度としてるし、捕まれば生まれてきたことを後悔するような目にあうだろう。
今なら警察に捕まる程度で終わるけど。
でも…それも貴方が選んだ道だから」







Aが銃口を掴んで額に押し当てた。







「ほら…撃て」







撃てばお前は死ぬ。
そう回りくどく伝えれば男は情けなく震え、地面に座り込んだ。
Aは男の拳銃を取り上げるとそのまま軍警に連絡を入れる。
その光景を、鏡花は呆然として見つめ、気づけば腕は震えていた。

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