【文スト】この世界と番外編 その四

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昼下がり、ヨコハマの街を行き交う人々はある二人組に目を奪われていた。
女性は頬を赤らめて騒ぎ、男性すらも羨望の眼差しを向けている。



「依頼人との待ち合わせは」



片方は恐ろしく整った顔立ちにモデルのような背をした砂色のコートの青年。
女性を魅了するような笑みを浮かべ、甘い声をしている。
服の下に覗く包帯さえ無ければ非常に秀麗な男だ。



「十五時頃を予定しています」



もう片方、包帯の男と並んで歩く青年。
中性的な顔立ちに蠱惑的な紫の瞳が目を引く。
落ち着いた声色と雰囲気はまるで童話の王子様のようだった。



「どっちがタイプ？」



「えー、選べないよー。でも…私紫の目の方かなぁ」



「私も〜！」



一見周りの声など聞こうともしないように見えるが実際、非常によく耳を立てている。
どちらかと云うと、包帯の男、太宰の方が。
事の発端は数十分前に遡る。



「本当に素敵ですわ…兄様の次くらいに」



「ナオミ、僕とAちゃん比べないで…心が痛い」



「男になると途端に目ぇ引くねぇ」



「男として負けた気分です…」



「敦、気をしっかり持て…俺だって負けた気分なんだ…」



「Aさん、すごくかっこいいですね！」



「かっこいい」



「…太宰さん凄い顔してますけど大丈夫ですか」



事務員にすら黄色い悲鳴を上げられているAを見て、太宰は不服そうな顔をする。
そして、敦が話しかけてくれたことにより鬱憤を爆発させた。



「なんでみんな面白がってるのさ！
私だって最初は『戸惑えば面白い』って思ってたけど全然戸惑わないし、
挙句の果てにはなんか凄い美青年になってて意味が判らないよ！」



「聞き捨てならないところがありますね」



「やめて！その美少年フェイスを向けないで！！」



女性問題を引き起こすほどモテる太宰は叫ぶ。



「しっかし…これなら太宰よりモテそうだね」



「与謝野さんやめてください」



「外に出て女性陣の反応を見れば判るのでは？」



「ナオミちゃん、やめようか」



突如現れた美青年に云いようのない焦りを覚えた太宰に、楽しそうな乱歩は嬉々として告げた。



「よし、お前達ちょっと出かけてみなよ。
面白いことになりそうだから」



こうして二人は外に出ることになった。
どちらが女性にモテるか、という理由で。
割とくだらない理由である。

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