＊ ページ26
夕飯を終えて、風呂に入るともう外はすっかり暗くなっていた。
途中、国木田から電話が入ったがなら代われと云ったら切られた。
明日、まだ太宰が子どもだったら絶対に押し付けようと決めた。
「お姉さん、見かけによらず本当家庭的だよねぇ」
「最近依頼人に犬の世話を頼まれていて」
「ごめんなさい」
濡れた髪を拭きながら深いため息をつく。
扱いが判ってきたとはいえ、まだ油断ならない。
「ねぇ、この部屋って明らかに二人で暮らしてるよね」
「あぁ、それが？」
「…誰と？」
「…上司？」
「上司って…それ面倒じゃないの？」
お前が云うか。
という言葉をゴクリと飲み込み、平然を装う。
確かに女関係でトラブルは起こすわ自分が恋人だと思われて刺されかけるわ爆弾が贈られるわで迷惑なことはある。
だけど
「まあ…面倒ごとは多いけど楽しいから別にいい」
「…ふぅん」
ふわふわの蓬髪を乾かし終え、ふぅと息を吐く。
手間がかかると思いつつ、世話はそんなに苦ではなかった。
『ハッ…これが母性か…』
くだらない事に気付きつつ、時計で時刻を確認する。
夜の十時、そろそろ寝るべき時間だろう。
「じゃあ、アンタの布団はそっちだから」
「端っこかい？」
「私も端だよ、流石に男女が同じ部屋で寝るのは問題があるし、
上司と暮らす時もそうだったから」
「…へぇ、上司って男なんだ…」
「？」
「なーんでーもなーい」
変だなと思いながらも、太宰はトコトコと布団の方へ行き、そこに転がった。
電気を消すと部屋は薄暗くなった。
その時、ぐいっと服が引っ張られた気がした。
『なにこれデジャヴ』
そのまま体が後ろに倒れる。
何故だろう、この手で倒される事に呪われている気がしてきた。
そんなことを考えているうちに体は柔らかい布団の上に倒れた。
「おい…なんのつもりだ…」
「ひぇっ、怖いなぁ、ちょっと待ってね」
倒した本人、太宰はいつのまに手に入れたのかAがいつもつけている赤いスカーフを手に取り、それを手早く両手に巻きつけた。
「…え？」
「うふふ、ごめんね」
縛られた両手に唖然とするAを見下ろす太宰の顔は子供のように無邪気で、そして確かに今の太宰の面影を感じさせた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 378人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (
レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません！この作品めっさ好きです！ (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか？以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もこすけ
| 作成日時：2018年7月22日 21時
