【文スト】この世界と番外編 その四

＊ ページ22

「太宰が幼児化したぁ！？」







朝、目の下に隈をつくったAは国木田の大声にコクリと頷いた。
その傍らには蓬髪の少年が縛られた状態で立っている。






「まさかお前、この状態のまま出社したのか！？」







「そう云いますが、こうしないとこっちが殺されるんですよ。
服の中調べたらピッキング用のヘアピンとか小型ナイフ出てくるし、
深夜になんとか縛り上げて大人しくさせたんですから」








「…その少年は本当に太宰なのか。隠し子とかではなく」







「間違いないかと。虎化した敦が触ったら無効化されましたし、鏡花の時も同じでした」







「と云うことは…異能者か」







「恐らく直接触れないと解除できないタイプの異能だと思います」







昨日の雷は恐らく異能者のもの。
厄介なことしてくれたなと殴りたくなる。
兎に角、この少年をどうにかしないといけない。







「はぁ…痛いのは嫌だから殺すなら早くしてくれるかい」







「…太宰だな」








「いや、殺さないから。ここはそんな所じゃない」







太宰の発言に国木田は本人だと確定させたようで、一度眼鏡を外して目頭を押さえた。








「次から次へと面倒ごとを…」








「どうしましょう、このまま戻るまで待つより異能者を探した方が…」








「ねぇ、死にたいから早くして」








「いい子だからこれ食べて待ってろ」







口に金平糖を突っ込むと彼は目を白黒させたのち、大人しくなった。
だがいつまでも大人しくはしてないだろう。
どうしようかと国木田と悩んでいると社長室のドアが開いた。







「何事だ」







「社長、その…少しトラブルが…」








事態を説明すると福沢はわずかに眉をあげた。
そして菓子を食べながら一部始終を聞いていた彼に近づく。







「乱歩」







「なにー？」








「お前はどう思う」








「面白いと思う」








「そうではなく、どうすべきだと考える」








「うーん」








乱歩は緑色の目で太宰とAを交互に見るとニヤッと口角をあげた。







「Aが適任だと思うよ」








「え」








「そうか」








唖然としていると福沢はAの方を向いた。
嫌な予感しかしない。








「異能が解除されるまでAに一任する」








つまり世話をしろと。
面倒ごとから逃げられた国木田がガッツポーズをしたこと、今でも許してない。

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