【文スト】この世界と番外編 その四

＊ ページ9

明らかに上物の服が並ぶ店内。
客がいない辺り、貸切なのだろう。
マフィア幹部の財力、恐るべしである。






「あー、やっぱ赤かぁ？」







「中也さん、それ値段見ましたか」







「でも露出がなぁ…」








「中也さん、そっち六桁です」








「お、これなんてどうだ」








「中也さん、それさっきの服の二倍の値段します」







「値段なんて気にするじゃねぇよ、礼だって云ってんだろ」







「いや、買い物について行っただけです…」







自分もそこそこ裕福な家で育ったがここにある服の値段をポンと出す中也に戦慄する。






「良いんだよ、俺が勝手にやってるだけだ」







「でも、ちょっとハードルが高い気が」







「いや、似合うと思うぞ。お前、女にしては背ぇ高いし細いからな。
あとキツめの目つきのせいか女子高生に見えない」







「最後本音ですね」







「いーから、どんな色が好きだ」







うーん、と悩みながら、ふと先程のワインのような落ち着いた色の服に目がいく。







「…落ち着いた色なら」







「りょーかい、んじゃこれだな」







中也が持っていた服を店員に渡した。
え、ちょっとと云う暇もなく服は箱につめられた。
レジで中也が黒いカードで支払いをしていたなんて見てない。
なにも見てない(自己暗示)。







「あ、ついでにあれとあれも頼む」







ナニモミテナイ。
あれよあれよと云う間に服は箱につめられ会計を終える。






「あの、やっぱり悪いです、こんな高いもの貰うわけには…」






「いーから持っとけ。こりゃあ俺の自己満足だ。
それに、良い女は良いモン着とくべきだぜ」







惚れた相手なら、尚更。







「…はい？」







「二回云わす気か！！」







さらりと凄まじい事を云われた気がして、聞き返せば真っ赤な顔で叫ばれた。
そのままタクシー代を押し付けられ、自宅に帰らされた。
タクシー代が軽く十万はあったことは記憶から消して。







「…綺麗、だ」








後日届いた服はワインレッドのワンピースだった。
それに加えチョーカーやらパンプスやらも入っている。
どれも高価そうながらとても良い趣味のものだった。






「…これ一回着て見せないと失礼だよなぁ…」







律儀な性格上、そんな事を考えつつ、後日ことが太宰にバレ、尋問されることと
ナオミから男性が女性に服を贈る意味を教えられ、社の窓から逃亡するのは三日後のことである。

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