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視たいもの、視たくないもの[桜様リクエスト] ページ12

今までの話で知っている人も多いと思うが、自分は『視える』タイプの人間である。
視えると云うのは、普通の人は視えないもの、云ってしまえば霊的なものが視えるのである。
ハッキリ視える日もあればぼんやりとしか視えない日も全く視えない日もある。
ただ、普通より視えてしまうだけ。







『別に視える事はそこまで苦じゃない』








日常的なものだし、そこまで気にするものでもなかった。
小さい時にそれを父に打ち明けた時も父は気味悪がることもなく、
それも個性だと云って受け入れてくれた。
だが、今日のこれはそんな簡単な話で済むものではない。







『…あり得ないくらいハッキリ視える』







今日は年に数回あるかないかの確率で訪れる、ハッキリ視える日だった。
朝から妙だとは思っていたが午後になるとそれは更に鮮明に視えてくるようになった。
入水しようと川に飛び込んだ太宰の背中に、おどろおどろしいものが視え、思わず手を引っ込めるほどに。







『太宰さん放置して戻ってきたけど…これまずい』







街の壁に背を預けながら、道行く人々から目をそらす。
人の波の中に、明らかに視えてはいけないもの達が蠢いている。
それはあまりに禍々しく、流石の自分でもこたえた。







『ここまでハッキリ視えるなんて…』








人に憑くもの、彷徨っているもの、その土地に縛られているもの。
自分は視えるだけで祓えないから視えないふりをするしかない。







『頭痛い、気持ち悪い、耳鳴りがする』







照りつけるような太陽の光に、立っているだけで汗が滲む。
ペットボトルの水をゴクリと飲み、水分を摂るが気分は悪いまま。








「早く、社に戻ろう…」








飲み終えたペットボトルをゴミ箱に放り込み、社を目指す。
帰ってからの仕事を思い出そうとするが、うまく頭が回らない。
顔を上げた時、"視えてはいけないもの"がこちらを覗き込んでいて、思わず喉から引きつった声が出た。






「あ…」







悍ましいそれは、自分が視えていると理解したのだろう。
まずいと思い、逃げようとするが足がうまく動かない。
周りの雑音が耳に突き刺さる。
だんだんと視界も歪んでいく。






『視えない方が良かった、こんなの』







倒れる、そう思った瞬間、体が誰かに支えられた。
礼を云おうとするがそれすらも億劫だった。







「大丈夫ですか?」








その声は、やけに静かで、周りの雑音が消えていくような気がした。

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もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません!この作品めっさ好きです! (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか?以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年7月22日 21時

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