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四十三話 [決意] ページ45

今彼はなんと云った。
探し求めるもの?なんでそれを。



「なんで?」



振り返った彼女の顔はまるで幼い子供のような表情だった。
硝子玉のような目が太宰を映し、揺れている。



「なんで…そのことを知ってるの…?」



子供が分からないことを親に聞くような顔だった。
不安と期待が混ざった表情に、太宰は口角を上げた。



「なんとなくさ。君はナニカを探していて、それを見つけるために一人を望んだ」



風が彼女の髪を掬い上げ、靡かせる。
紫色の瞳が見開かれた。



「そのナニカは、君が追い求め、恋い焦がれるもの。
身を焦がすほど望んでも今まで手に入らなかったんだろう?」



指先が白くなるほど、スカァトの裾を握りしめた。
俯き、表情は見えない。



「探偵社においで。あそこなら見つかるはずだ。
君が追い求め焦がれたソレが」



見つかる。
ソレが見つかるの?
一度手から零れ落ち、二度と掬い上げられなかったものを。



『理解者を…心の底から信頼できる人が見つかる?』



誰かを信じたいと思うと同時に、
裏切られた時の恐怖から、心の何処かで拒絶していた。
誰かと、触れ合うことが怖かった。



「…本当に、見つかりますか」



探偵社から逃げたのは、誰かを信じるのが怖かったから。
他人と関わるのが嫌だったから。
でも、でもあそこなら。



「私が探しているものが…見つかりますか」



太宰を見つめるその瞳は期待と不安の色を映していた。
太宰はニッコリと笑い、少女の期待に応える。



「勿論」



「ッ!」



誰かを信じるのが怖い。
でも誰かを信じたい。
一人でいい。裏切られたくない。
一人は怖い。誰かと信じ合いたい。



「決めるのは君の自由さ」



その言葉に、あぁと声をもらした。
そうか、もう縛られる事は無いんだ。
自分の意思で決めていいんだ。
僅かに手が震えた気がした。



「私は…」



グッと拳を握りしめ、太宰を見つめた。
もう迷いはなかった。



「探偵社に入ります」



自分でも驚くくらい迷いのない声だった。
太宰は彼女の答えに、ニッコリと笑った。
そして態とらしく手を広げ、高らかに云った。



「ようこそ武装探偵社へ」



彼女の人生の歯車が動き始める。
ここから少女の物語は更に複雑に絡み合っていく。

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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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