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四十二話 [図書館ではお静かに] ページ44

「ぎゃぁぁぁぁ!!」



あまりの事態に、きゃあではなくぎゃあだったことが彼女がどれだけ戦慄したかを物語っていた。
背後に立っていたのは探偵社の包帯男こと、太宰治。
突如静かな図書館に響いた少女の絶叫に
周りの客は酷く驚いたように彼女の方を見た。



「そんな驚かなくてもいいじゃないか」



成人男性に背後を取られ、叫んだ少女に客達は何やらヒソヒソと話し始め、
図書館のスタッフは何処かに電話をかけようとしていた。



「あれ…やばいんじゃない?」



「警察呼んだほうがいいって…」



側から見れば女子高生に迫る成人男性に見える絵面。
周りの者が騒めくのも当然だろう。
太宰は落ち着いて、そして礼儀正しくお辞儀をした。
マニュアルのようなお辞儀は秀麗な太宰がすることで思わず見惚れるものになった。



「お騒がせして申し訳ありません。私は武装探偵社の者です」



武装探偵社。
その単語に周囲の騒めきは一瞬で静かになり、次の瞬間には安堵に変わった。
Aは周囲の反応についていけなく、目を白黒させている。



「彼女は探偵社で保護する方です。どうぞご心配なく」



なんだ武装探偵社か、なら安心だ。
図書館のスタッフも大事にならなかったことに胸を撫で下ろした。



「じゃあ騒ぎになるから、行こうか」



「え、ちょ、待っ」



「ほーら、行くよ」



「担ぐな!誘拐だ!!」



軽々と担ぎ上げられ、抵抗虚しく図書館から連れ出される。
図書館から出ると、周囲の好奇の目にさらされたが、
太宰の「武装探偵社でーす」の声で視線は一瞬で無になる。
最初の方は周囲に助けを求めたがしばらくして無駄だと分かると
射殺さんばかりの視線を太宰に向けながら大人しくした。



「うん、ここら辺でいいだろう。降ろすよ」



「…なんのつもりですか?」



降ろされたのは海の見える公園だった。
潮風が頬を優しく撫でる。
Aは太宰を見つめ、低い声で云う。



「武装探偵社には入らない。それはもう揺らぐ事はありません」



「へぇ…そう」



太宰は目を細め、口角を上げた。
なにかを企んでいる顔だった。



「…さようなら」



強引に話を切り上げて、踵を返す。
が、後ろから太宰の含み笑いが聞こえた。



「探偵社なら君が探し求めるものが見つかるかもしれないよ?」



その言葉で足は完全に止まった。

四十三話 [決意]→←四十一話 [本の城での遭遇]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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