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二十二話 [攻防と弁解] ページ24

退け、退かない。
警察呼ぶぞ、待ってくれ。
貴方がやったのか、わけがあるんだ。
そんな不毛なやり取りを続けること十五分。
なんとかAを落ち着かせて座らせる。



「三メートル以内に入ったら叫びます」



「了解、だから落ち着こう」



正座した太宰と仁王立ちのA。
そして哀れな被告人の弁論が始まる。



「君、昨日制服が濡れていただろう?」



「制服…あぁ、貴方を助けた時に濡れたんですよ」



太宰を助ける際、服も脱がずに飛び込んだため、制服はびしょ濡れだった。
茶屋に行く前にある程度拭いたのだが、それでも制服は湿っていた。



「あのまま寝かせたら風邪を引いてしまうと思ったのだよ」



「それで…脱がせたと」



「意識のない女性の服を脱がすなど胸が痛んだが仕方のないことだったのだよ!!」



少し気まずそうに言ったAの変化を見逃さず、
ここが攻め時だと言わんばかりに太宰はオーバーな身振り手振りで言う。



「君の体には触っていない。着替えさせる時も見ないように心がけたよ!」



「…」



自身のためにやった行為。
それでは頭ごなしに怒鳴り散らすことも出来ない。
元を辿れば太宰が全ての元凶なのだが
捨て犬よろしく許しを請うような目をされると強く出れなくなってしまう。



「信じてくれたまえ…Aちゃん」



嘘はついてない。
風邪を引くと思って彼女の服を脱がせたのは真実だ。



「…判りました。勘違いしてごめんなさい」



「Aちゃん!!」



目を輝かせて太宰は喜ぶ。
それすらも胡散臭いがこれ以上言及しても無駄だとなんとなくわかっていた。



「美しくもあり優しいときた!君は天使のようだねぇ」



「気持ち悪」



ニコニコと笑う太宰。
どうやら太宰はAの事が気に入っているらしい。
理由は判らない。
初対面で心中を申し込まれ、虎騒動でからかわれ、一晩たって更に絡まれている気がする。



「…君の正体については今は聞かないよ」



その言葉は彼女には届かなかった。
いや、届かなくて正解だったろう。



『当たり前だ!!』



あの時の少女の姿。
彼女は当然のことを口にしたまでだった。
生きたいと。



「…美しかったなぁ」



太宰はそう呟くと、昨晩彼女を抱き寄せた手を見つめ、握った。

二十三話 [ドラム缶in太宰]→←二十一話 [お着替え騒動勃発]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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