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一話 [人生万事塞翁が虎] ページ3

…自分は死んだのか。
そうか、あれだけの高さから落ちれば即死だろう。
あの高さから、頭から落ちて無事なはずは無い。



「君!大丈夫!?」



なにが大丈夫なものか。
自分は死んだんだ、もう、放っておいて。
なにもかも億劫なんだ。



「どうしよう…まさか死んでる…!?」



だからそう云っているのに。
何故死人に話しかけている?
というか何故私は、



「死んでるのに意識がッ!?」



「い!?」



理解ができなくて勢いよく起き上がると額に強い衝撃を感じた。
少女は再び元の体制に戻ることになった。



「〜ッ、なんで…死んだはずなのに…い、たい?」



額がジンジンと痛む。
何故だ、死んでも痛覚はあるのか?



「よかった…生きてた…」



「は…生きてる…?」



その時ようやく目を開けてまともに景色を見ることができた。
目の前に広がる真っ赤な夕焼け。
鼻孔をつく青臭い草の香り。
痛む額と風が頬を撫でる感覚。



「死後の世界…じゃない、?」



死後の世界だとしたらあまりにもリアルすぎる。
少女は起き上がり、周りを見渡した。



「川辺…?なんで、だって私は…」



「き、君…ここで倒れてたんだよ…」



すぐ横から少年の声がした。
少年は先程の少女と同じように額を押さえていた。
涙を浮かべた朝焼け色の瞳でこちらを見る。



「倒れていた…?どうして…?」



「え…僕と同じ行き倒れなのかと…」



「だって…だって私あの時…」



死んだはず。
頭から地面に落ちて、間違いなく。
じゃあここにいる私はなんだ?
急に黙った少女に少年は首を傾げる。



「…なんでもない。助けてくれてありがとう」



その時少年は初めてまともに少女の顔を見た。
少女のポニーテールとなった長い髪が揺れる。



「私の名前は…小泉A。貴方は?」



雪のように白い肌と黒壇のように黒い髪。
血のように赤い唇と深い紫色の瞳。
かつて孤児院で読んだ御伽噺の主人公のように綺麗だった。
いや、むしろゾッとするほどの美しさがある。
それに何処か冷えたような恐ろしさを感じた。



「僕は中島敦…えっと、よろしく」



この出会いはまだ物語の前触れに過ぎないことを二人はまだ知らない。

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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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