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二百四十七話 [蝶が堕ちる] ページ49

復讐の刃が蝶を墜とす。
まだ己の力が罪だと知らなかった、あの日の復讐の為に。



「《猟犬》部隊幻の五人目、金属を操る闇の処刑人」



椿も、銀色の刃すらもねじ伏せた五人目。
その存在に、魔人は太宰に不敵な笑みを向ける。



「探偵社に遠き因縁を持つ男…彼を相手に、探偵社は何人生き残れますかね?」



蝶は抗った。
地下水路、追い詰められた道の先。
広津、銀、立原を手にかけたレインコートの異能者。



「探偵社を扶け、妾もその罰を受け容れる」



猟犬が来た時のために仕掛けた爆弾を手に、与謝野は己の死を覚悟して目を閉じた。
なのに、いつまで経っても衝撃は来ない。
呆然とする彼女は気づいた、"立原が仕掛けた爆弾"の中身が、空だということに。
瞬間、胸ぐらを掴んでいた異能者の体から力が抜ける。



「ッ、金属芯のマネキン…!?」



それは、ただのマネキンだった。
なのに生きているように動いていた。
それは、紛れもなく異能による金属操作で。



ドスッ



与謝野や脹脛に短刀が突き刺さる。
痛みに叫ぶ与謝野が倒れた。
敵は、ずっとそばに居たのだ。
人形を操り、そして"猟犬である自分の存在"を隠した。



「ご苦労様です」



地下の扉を開け、現れたのは猟犬部隊だった。
その瞬間、与謝野は唐突に理解した。
迷路のようなマフィアの地下通路を正確に追ってきた理由、扉をすり抜けて現れた敵、偽物の爆弾。



「元軍医医士官として軍事機密を幾つも知る危険な男、森鷗外。
彼を監視する為に送り込んだ潜入捜査官がこんな形で役立つとは」



条野は唇に笑みを浮かべ、"優秀な兄と比べられるのが嫌で逆を行ったというマフィアの青年"の肩に軍服をかけた。



「五人目の《猟犬》、潜入捜査官の立原道造だ」



そして、彼は語る。
十四年前、与謝野が殺した兵士は、自身の兄だと。
前任の潜入捜査官がマフィアを抜けたことをきっかけに、志願したのは立原だった。



「マフィアに居れば必ず、アンタに近づけると思った」



立原の目は、兄を殺めた蝶をとらえていた。



「兄の、復讐…そこまでして…」



罰は、既に用意されていた。
与謝野は諦めるように僅かに笑い、こう告げる。



「なら…好きにしな」



一瞬、脳裏に浮かんだのは死ぬなと告げた少女の声だった。
しかしそれは、立原が与謝野に向けた銃口から発せられた銃撃に掻き消された。

二百四十八話 [赤の記憶]→←二百四十六話 [死ぬな、絶対に]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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