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二百四十六話 [死ぬな、絶対に] ページ48

運転手の首に刺さる長い軍刀。
そこら中に飛び散る血。
鼻をつく強烈な鉄の香りに口を押さえる。



「敵襲です!車から降りて!」



敦の言葉に、勢いよく扉を開ける。
そこには、既に居た。



「彼奴…!」



レインコートで全身を包んだ、異様な刺客。
命令を出すように指先を動かすと、血塗れの軍刀が生きているように奴の手に戻ってくる。



『なに、この違和感』



相手から一切の気配を感じられない。
まるで、生きていないような。



「A」



与謝野がAの名を呼んで見つめた。
その目には、決意の色。



「敦と行きな。奴は妾が引き受ける」



「ッ、与謝野先生!」



「そんな!奴一人なら四人で掛かれば勝機があるかも」



四人なら、勝てるかもしれない。
だがそれは可能性の話だと与謝野もAも判っている。



「莫迦だね、大事なのは勝つ事じゃない。ミッチェルを守り切る事だ。
治療は済んでる、軍警に道路封鎖される前に彼女をフィッツジェラルドに届けろ」



その為に、彼女もここに来たのだから。



「それが、探偵社復活の唯一の希望だ」



その希望に、運命を賭ける。
賭け金は己の信念と命。



「判りました」



「Aちゃん!」



Aは死んだ運転手に手を合わせ、運転席から降ろす。
その光景に鏡花は彼女の意思を理解し、反対側からもう一人を降ろした。



「私が運転する」



決意をしたAと鏡花に、敦は戸惑いの色を見せた。



「心配すんな。妾は死に難い」



与謝野はそう云って、ニッと笑った。



「どうか…ご無事で!」



敦の言葉に与謝野は「あぁ」と頷く。
敦が乗り込むと、Aは与謝野の方を向いた。



「死んだら、特別コース出来ませんから」



「死なないさ」



「…先生」



Aは判っていた、与謝野は十四年前に亡くなったあの青年があの異能者に重なって見えると。
だからこそ、厳しいことを云うように。



「死人は、蘇りません」



「!」



両親を亡くした彼女だからこそ判る。
どれだけ願っても彼らは生き返らない。



「…あぁ、判ってるよ。だからね」



死んだら治せないから。



「アンタも、死ぬんじゃあないよ」



「…はい」



車に乗り込み、ドアを閉めた。
また、会えることを願って。

二百四十七話 [蝶が堕ちる]→←二百四十五話 [合流、そして犯人は?]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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