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二百四十二話 [永遠の別れの瞬間] ページ44

『本当は私を恨んでいるのでしょう』



冷静さを失いそう叫んだ。
やってしまったとも思った。
それでも熱くなった頭を心無い言葉を吐くことを止めてはくれなかった。



『お母さんの代わりに、私が居なくなれば良かった!!』



『A!!』



泣きながらそう叫んだ瞬間、父の声でハッとした。
父は怒りと悲しみを浮かべた顔で、静かにこちらを見つめていた。
それが、辛かった。



「…本当は、殴って欲しかった、怒鳴って欲しかった。
そうすれば、少しは不安も拭えたかもしれません」



静かにやめなさい、と云う父を見ていることが出来なくなり、部屋に閉じこもった。
自室に鍵をかけ、泣きながら誰に向けるでもなく謝り続け。



「次の日、父は休みの予定でした」



一睡も出来ずに迎えた朝、父は扉越しに話しかけてきた。
静かな、いつものように落ち着いた声色で。



『職場から来てくれないかと連絡が入ったんだ。…A、私は』



『行って、くればいいです。いつもの事でしょう…』



扉越しに話しかけてくれた父に合わせる顔が無く、つい突き放すように云った。
気づいた時には父は、



『そうだな…』



悲しげな声でそう云った。
そして、家を出る前に、一言。



『帰ってきたら、話がある』



そう告げて出て行った。
まさか捨てられるのか、愛想が尽きたのか。
そう、震えながら待っていた。



「…でも、父が帰ってくることはありませんでした」



あの日、雨が降った日。
本来なら父が休みだった日。



「父の職場から電話がかかってきたんです。
…それは、父が殉職したという報告でした」



その電話を受けた後のことはよく覚えていない。
兎に角病院まで走り、気がついた時には冷たくなった父の遺体と対面していた。



「話によると、ある事件で関わった犯人が子どもを人質にしようとして…
それを父の部下が説得しようとしたんですが失敗し、
殺されそうになった子どもを庇って亡くなった、と…」



その時は理由なんてどうでも良かった。
父に何度も謝った。
だって、父が死んだのは私のせいだから。



「私がッ…あの時父を引き留めていればあんなことにはならなかった…!」



謝った。
父の亡骸に何度も。
それでも目を開けない、全て遅かった。



「私は、父を殺しました」



この罪深い命は、母親だけで無く父親も殺してしまった。

二百四十三話 [父からの手紙]→←二百四十一話 [あの日の罪]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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