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二百三十一話 [罠と、赤と白] ページ33

置かれていた無線機から聞こえてくるのは、かつての宿敵フィッツジェラルドの声。






『久しぶりだな、窮状を笑ってやりたい所だが時間がないので手短に話す。
虎人の少年をそちらに向かわせた』






その言葉に、谷崎と賢治は敦の事だと気づき、生きていたのかと顔を明るくさせる。
だが森はなにかを考え込むように、表情を固くさせる。







「…少年が此処に来る理由は?」







『取引だ、俺の為に治癒異能を使え。
対価に探偵社復活の糸口となる情報をやる。
集合は二十分後、五番通りで……ではな』







「…待て、何故お前はこの隠れ家の場所を知って」






一方的に切られる通信。
探偵社復活の糸口、見えた希望。
だが、






「妙だね」







森の云う通り、この状況は妙だった。
隠れ家の発見にしろ、探偵社の救済にしろ、利益は恐ろしく少ない。
神の目で隠れ家を発見したところまでは良い。







「この隠れ家が判ったのなら探偵社などより軍警と取引すべきだろう。
弱った探偵社より強大な《猟犬》に恩を売った方が利益が大きい」








敦を軍警に引き渡すにしろ、探偵社を売るにしろ、
猟犬に刃向かい、対立するのはリスクが高い。







「私の知るフィッツジェラルドは強い側。勝ちそうな側に味方する男だ」







張り詰めたような緊張が室内を支配する。








「この取引、罠じゃあないかね?」









みんな、壊れた。
まるで火がついたように熱い自分の体に、ふと冷たいものが触れた。







「し、ろい…」








白い肌に落ちる、白い羽のようなもの。
それは触れるとあっという間に消え、水となってしまった。
これは知っている、本で読んだものだ。







「ゆ、き…」







白い雪は、ふと、真っ赤に染まった手に落ちた。
赤い世界に落ちる、一つの白。
燃え盛る炎も、耳障りな音も、なにもかもどうでも良くなった。







「ッ…ふふ、ふふふッ…」








枷は壊れた。
もう誰にも支配されない。
あんなに怯えていたものは簡単に壊れた。







「ふふッ…あはははは!!」








綺麗な紅に染まった手を掲げ、狂ったように笑う。
泣きそうなほど痛いのに、凍てつくほど寒いのに、本当は笑いたくなんてないのに。








「あははははッ…!」







くるりくるりと回りながら笑う少女の頬を伝う、一筋の光。
雪が落ちる、真っ赤な世界で少女は笑い続ける。
まるで壊れた人形のような瞳は、悲しい紫色に染まっていた。

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もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - 全裸待機してますドゥルルルルルル卍^о^)卍(←)アッ、何時もハラハラしながら楽しく読ませて頂いてます!文スト十七巻…まだ読んで無いけど、物語に着いていけるようにします!これからも本編、番外編と共に更新頑張って下さい!応援してます!初コメ失礼しました! (5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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