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二百二十四話 [魔人の策謀] ページ24

ドストエフスキー、魔人。
到底自分達だけでは敵わない異次元の相手。



「奴は今欧州の異能刑務所『ムルソー』に収監されている。
あそこは存在自体が国家機密で正確な場所は欧州政府上層部しか知らん」



「欧州…」



「無論、接見は不可能。いわば世界一安全な隠れ家だ」



欧州、異能刑務所、嫌な条件が揃いつつある。



「でも!監獄なら奴も外に新たな指示を出せない筈…」



「いや、あの男ならやる」



Aのはっきりとした声が部屋に響く。
あの男ならやれる、いや、やる。



「あの魔人が、わざと捕まったあの男がそんなミスするはずがない」



「彼女の云う通りだな。
奴がワザと捕まったのなら当然そこも対策済みだろう。
看守を抱き込んで外との通信を仲介させるとかな」



「…その手の工作は十八番だと思う」



策謀の悪魔である魔人。
もし、彼なら次はどうする?
牧師を操りフィッツジェラルドを襲わせ、その次は?



「さて…探偵社に『神の目』を使われるとやや面倒ですね」



もし、自分がその立場ならどうする?



「一応、所有者を排除しておきますか」



魔人なら…どうする?



「つまり…奴に勝つのは不可能?」



「喩えるなら奴だけが駒を動かし続けられるチェスと同じだ。どうにもならん」



もし自分があの男なら、どうする?
暗殺は失敗した、つまり一度はフィッツジェラルドを殺そうとした。
その意味は?



「『神の目』所有者の…死」



だがそれは失敗した。
となると次の策は、フィッツジェラルドの手が壁に刺さる万年筆に触れる。
瞬間、じわりと赤い血が滲み出て、蠢き出す。



「血液の遠隔操作だ!」



ホーソーンの《緋文字》。
触れればそれは鋭い刃となる。



『神々の国の首都が間に合わない!!』



咄嗟に敦も立ち上がるが届かない。
フィッツジェラルドはやけに清々しい顔で云う。



「身体強化も間に合わん、死んだな」



異能を発動させようと叫ぶが間に合わないのは一目瞭然。
漸く見えてきた光はまたしても魔人の手によって握り潰されようとしていた。
伸ばした手は届かない、悲痛な声は聴こえない。



『やっぱり私は、死ぬ運命なの?』



偽りの真実、悪意なき正義の炎。
身を焼かれる未来は、変えられないのだろうか。
ハッピーエンドの光はまだ見えない。

二百二十五話 [生き残りを賭けたチェス]→←二百二十三話 [隠れ家と判っていた事]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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